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控えめに頷くと、にんまりとした顔を見せた。 「そう言ってくださるのは嬉しいですねぇ。わたしなんて唯一大河さまが懐いていて、なんでかは知りませんけど。あとはまあ姫宮さまの繋ぎみたいなポジでしたので、その姫宮さまがいる今、そろそろいいかなーとは思っていたんですけど、どうしてそのようなことを言ったんです?」 「あ⋯⋯え、と⋯⋯」 今度は話を振られて、しどろもどろになった。 何故、小口が必要なのか。 小口が姫宮よりも大河のことを知っていて、さっきだって御月堂と話しているのが嫌で、こっちに振り向いて欲しくて、ボードを介して姫宮を呼んだと、姫宮は分からずじまいだったが、小口は分かっていた。 大河のことを分かってあげられない悔しさと、羨ましさとそのおかげでどうにか大河と対話できている嬉しさもあって、本当は自分で我が子である大河のことを分かってあげなければならないが、ボードのように介してくれる小口が必要だと思った。 頭では思っているが、口で言えるかどうか。 「⋯⋯上手く、言葉にできるか分かりませんけど」と、やや俯きがちで恐る恐るといったように口を開いた。 「私よりも大河のことを分かっていて、安野さんの時もそうでしたが、慶様と話しているだけでも大河が嫌がっていることも、すぐに分かってあげられなくて⋯⋯そういうちょっとしたことを小口さんは分かっているのが羨ましく思いますし、私には察することができないので、そんなことだけでかもしれませんけど、いて欲しいなと⋯⋯。本当は私が分かってあげないといけないのですけど⋯⋯」 話している最中、緊張で口が震え、より上手く話せなくなり、その焦りも感じたが、何とか言えた気がして、同じく震える両手を握りしめた。 「ほんと、そんなことだけで、ですか?」 少しの沈黙の後、淡々とした声音で返した。 いつもと変わらない彼女の口調だが、今の姫宮にとってはビクつくものだった。

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