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33.
「姫宮さまだって、わたしのように大河さまに付きっきりでいれば、嫌でも大河さまの思っていることが何となく分かりますよ、なんとなーくね」
「はい⋯⋯」
「ですけど、こんなわたしでもただ姫宮さまがいて欲しいって言うのでしたら、いてあげますよ」
ゆっくりと顔を上げると、先ほどよりも口角を下げ、優しく微笑みかけた。
ふわっと、気持ちが軽くなるのを感じた。
最初の小口の言い方だと言わなければ良かったとすぐに深い後悔をしていたものが、今の小口の表情を見た途端、安堵で全身の力が抜けてしまいそうだった。
あんなにも震えていた手も気づけばおさまっていた。
「⋯⋯ありがとうございます」
顔の強ばりも緩んだ気がする。
そう思ったのも束の間、二人は目を奪われたかのような反応を見せた。
その反応なんだろうと半ば遅れてそう思っている時。
「はぁ⋯⋯っ! なんて愛らしい微笑みなのでしょう⋯⋯! 向日葵のように元気いっぱいな笑顔もそりゃあ見てみたいですけど、桜のように控えめなのも姫宮様らしさもあって、それにしたって急には心臓に悪いですね! 小口ではなく、私にもっと! もっとお見せください⋯⋯!」
「⋯⋯ぇ⋯⋯え⋯⋯と⋯⋯」
肩をがっしりと掴まれ、獲物を狩る勢いに迫られ、鼻息荒くする安野に困惑の色を見せた。
急にどうしたのだろう。
「ほらほら、そんなに迫られたら姫宮さまが困って何も言えなくなるでしょー。今井さんがいたら今頃どつかれますよ」
いつものように覇気のない言い方で言ってくる小口であったが、「⋯⋯まぁ、わたしは止めはしないですけど」と呟いた。
その顔をよく見ると、口角を上げていた。
面白がっている。
「お見せください!」と鬼気迫る安野に助けて欲しいと小口に目を向けても、彼女は思わずといったように笑みを零すだけで何もしてくれず、ただただほとぼりが冷めるのを待つしか他がなかった。
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