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「──⋯⋯大河。おやつの時間になったから、ママと一緒に食べよう? 今日はね、プリンを作ってみたんだけど⋯⋯」
大河の部屋の前でおずおずと言う。
一旦別れた時と変わらずに扉の前で携帯端末を弄っていた小口に大河の様子を訊いてみたが、時折声を掛けてみても何の反応もしないのだという。
常に目の届く範囲で大河のことを見ていたものだから、扉を隔てただけでも見えない障害となって姫宮は不安に襲われた。
この部屋の中でもしも倒れていたら。
急に嫌なことが過ぎり、血相を変えた姫宮は扉を叩いた。
「大河っ、大河、返事をして⋯⋯っ!」
突然狂ったように叩きつける姫宮に、さすがの小口もぎょっとした顔をしていたが、姫宮は目もくれずひたすらに叩き続けた。
すると、扉が押される感覚がし、一瞬叩くのを止めた姫宮は、ハッとして急いで目線を下に向ける。
申し訳程度に開けた扉の隙間から大河が顔を出していた。
その顔は驚いているような表情を滲ませている。
「大河⋯⋯! 良かった⋯⋯返事をしないから、何かあったのかと⋯⋯」
「なんだ、そういうことだったのですね。急にあんなことをされるので、姫宮さまの方こそ何かあったのかと思いましたよ」
膝を着いて安堵する姫宮に小口が淡々とした口調であったが、少々驚いている様子に先ほどの自身の行動を振り返り、途端、顔を赤くした。
「⋯⋯すみません⋯⋯」
「まあ、なんでもいいですけど。で、おやつがなんでしたっけ?」
「⋯⋯あ、えと、大河。プリンを作ったの。プリン食べようか⋯⋯」
まだ驚いている様子の大河に誤魔化すような苦笑いのような顔を浮かべた。
席に着いて、お手製のプリンが目の前に置かれてもなお、大河がじっと見てくる。
「大河さまはプリンよりも姫宮様のことを見ていたいんですね」と、今井が微笑ましげに言っていたのを誤魔化すように笑っていた。
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