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「松下の奥様もどうぞ」 「え、私もよろしいんですか?」 「それはもちろんですよ。さあお二方、こちらにおかけになって下さい」 安野が姫宮の前にプリンを置いたことで、その席には玲美が、大河の前には伶介が座ることとなった。 「本当に美味しそう」 「たーちゃんがいうんだから、ぜったいにおいしーよね」 同意を求めるように伶介は大河にそう言うと、大河は大きく頷いた。 流れ的に姫宮が作ったプリンをあげざるを得ないものとなったが、もしかしたら姫宮と二人の味覚が違くて、美味しくないのかもしれない。 不安と緊張の中、「いただきます」とそれぞれスプーンを掬ったプリンを口に運ぶ二人のことを見ていた。 と、口に入れた直後、顔を綻ばせた。 「「美味しい!」」 ほぼ同時に声を上げた。 「このカスタードのほどよい甘さとソースのビターがちょうどいい味をしてますね! プリンの柔らかさも良くて! 美味しい!」 「たーちゃんがいったとおり、おいしいよ!」 二人は顔を見合わせ、「おいしいね」と言い合っていた。 その顔は嘘などついてなさそうな満面の笑みだった。 二人のその顔を見た時、さっき感じていた不安が嘘のように消え、深い安堵を覚えた。 ちゃんとしたものが作れて良かった。 「姫宮さん! 何か特別なものでも入れたんですか!」 「あ、いえ⋯⋯レシピ通りに、それに一人で作ったわけではないので⋯⋯」 「いえいえ、姫宮様。私達はただ口で言っていたぐらいですから、実際に作ったのは姫宮様ですよ」 「だから自信を持っていいんですよ。皆様の箔が付いた最高のプリンを作れたことに!」 そばにいた今井はそう言ってくれ、江藤は背中を押してくれるような、力強く言ってくれた。 江藤が言うような大袈裟なものを作れたわけではないが、それでも大河以外に二人も美味しいと言ってくれたのだ。少し自信を持ってもいいかもしれない。

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