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40.
「ぼくはいいんです。たーちゃんとたべてください」
「でも⋯⋯」
「きゅうにおじゃましてしまったので、そこまでしていただいてはもうしわけないので」
そのぐらい何とも思ってないのに、と思うのに親がいる手前、先ほどの自身の行ないを反省しているのか、罰の悪そうにしている伶介にこれ以上声を掛けられない。
どう言ったらいいんだろう。
「あの、伶介くん⋯⋯」
考えがまとまらぬままで何か言おうとした時。
伶介の前に食べかけのプリンが差し出される。
誰がと思ったのも一瞬で、その差し出した相手に今度は驚かされることになった。
「え、たーちゃんいいの⋯⋯?」
伶介もまさかそうしてくれるとは思わなかったのかもしれない。非常に驚いている彼に、大河は頷いた。
「でも、これはたーちゃんのぶんだから、たべて。ぼくはたーちゃんのやさしさだけうけとっておくね」
ありがとう、とにこにこと笑う。
何て良い返しをするだろう。すぐにそのような返しを思いつくなんて、この子はまさしくあの松下の子どもだという尊敬の眼差しと、5歳児に当たり障りのない返しすら言えない自分を恥じた。
ところが、大河はそれで納得しなかったようだ。無言でぐいぐいと押し付けてくる。
「大河、そんなことをしたら落としちゃうよ」
「そうですよ大河様。誰かに自分のものを分け与える優しさは尊重しますが、それでは伶介様の優しさの意味がなくなりますよ」
安野がそう言って、「それは大河様が食べてください。これは伶介様にあげます」と真新しいプリンを差し出してきた。
と、二人に優しい笑みを見せていた安野は不意に姫宮の方へ向けた時、軽くウインクをした。
が、一瞬眉を下げたのは気のせいだろうか。
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