45 / 69
45.
「たーちゃんは、はにわとおなじくらいおえかきするのがすきだねぇ」
『すき』
「でも、いちばんはままだよね」
『うん』
「だいすき?」
『だいすき』
「すごくすごく?」
『すごくすごく』
「へへ、ぼくもぼくのままのこと、だいすきなんだ」
古いお絵かき帳をパラパラと捲っていた伶介が、今まさに姫宮のことを描こうとしていた大河が顔を見合わせると、「ねー」と伶介が笑いかけた。
たとえ、大河の声じゃなく、機械音であってもその言葉が聞けて、この上なく嬉しい。胸がいっぱいいっぱいになった。
「⋯⋯姫宮さん、良かったですね」
「⋯⋯はい。松下さんも」
玲美と顔を見合わせると子ども達と同じように笑い合った。
「たーちゃん、ぼくもおえかきしていい?」
新しいページに母を生成している最中の大河を覗き込みながら訊いていた。
うん、と頷くかと思いきや、クレヨンを持ったままじっと動かない。
悩んでいる様子であるらしいが、何故悩んでいるのか。
と、周りを見渡し始めた大河と目が合った時、大きな目を目一杯開いた。
それは姫宮でも分かるぐらいの驚きようだった。
そんな反応を見せる大河は初めて見た。が、何に驚いているのだろうか。姫宮が変な顔をしていたわけでもないし、何かが付いていれば、玲美が真っ先に言ってくれそうな気もする。
「急に大河君どうしたのでしょうね」
「何か私やりましたでしょうか⋯⋯」
先ほどのことを思い返しても、ただ玲美と見ていた、二人のやり取りが照れくさく、大変可愛らしいと思ったことしか。
「あ⋯⋯」
姫宮は思わず小さいながらも声を上げた。
先ほどの初めて聞いたあのやり取りが原因なのか。
ともだちにシェアしよう!