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ぐいぐいと迫る玲美にたじろいでしまった姫宮だったが、この我が子大好きだという勢いは松下を彷彿させるもので、似た者夫婦だなとくすりと笑った。
改めて構えた姫宮は、伶介に説得されたからなのか、それとももう気が済んだのか、ハニワの大群から顔を出す我が子の決定的瞬間を逃すまいと、タップをし続けた。
「撮れてますかね⋯⋯?」
「撮れているか、見てみましょう」
「ここをタップするんですよ」と玲美が差す指先をタップすると、姫宮が撮った写真が画面に映し出された。
「これは⋯⋯撮ったものですよね⋯⋯?」
「はい、そうなんですけど、これはブレちゃってますね⋯⋯」
玲美が指を払う動きで、連続で撮った写真が次々と映し出されていくが、どれもこれも何を撮ったのか分からないモザイク状になっていった。
「撮るの、難しいですね⋯⋯」
「そうですね⋯⋯ですけど! 諦めずにまたチャレンジしてみましょ! まだ可愛らしい被写体達がいるのですから!」
玲美の勢いに気圧されるながらも、再び構えようとした時、姫宮の手に手を重ねられた。
玲美かと思ったが、隣ではなく、背後だったことにより、その考えは打ち消された。
じゃあ、誰なのか。
「⋯⋯連続で撮るのではなく、ここだという時に撮ってみてはいかがでしょうか。それと、肩に力を入れず、もう少しリラックスした状態で、なるべく揺らさずに被写体を捉えて⋯⋯今です」
頭が混乱しながらも反射的にタップをした。
今撮れた写真を確認してみると、やや大きめのぬいぐるみを形が変わるぐらいに抱きしめる大河と、それよりも一回り小さいぬいぐるみを持った伶介がハニワを通して会話している姿が映し出されていた。
ちゃんと撮れた。
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