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「たーちゃん、どうしたの?」 伶介の問いかける声に振り向くこととなった。 撮った時と変わらずに大河はハニワのぬいぐるみを抱きしめていた。 ところが、その目線が姫宮達にではなく、その背後に向けられていた。 顔を引きつっているような、信じられないものを見ているような目。 ただ見ているだけならさほど気にならないものだが、いつもの無表情ではないその顔を気にせずにはいられなかった。 後ろを恐る恐ると振り返る。 離れた所で上山が窓を拭いているところだった。 「大河⋯⋯上山さんが何かしたの⋯⋯?」 一日ほぼ大河といるのは姫宮か小口ぐらいなものだ。 しかし、大河のために出かけた際に何かしらあったのかもしれない。 その何かあったなんて思いたくはないが、ただでさえ悪い出来事があって口が利けなくなっている我が子だ。これ以上何かあって欲しくはないのだが。 しばらく姫宮が言ったことすら聞いていなかった様子の大河だったが、不意に迷うような足取りでこちらに歩み寄ったかと思うと、小さな手で服を掴んできた。 瞠目した。 照れ隠しで姫宮と目を合わせることすらなかった滅多にない我が子が、このようなことをすることなんて一度もなかったのだ。 酷く戸惑った。 「⋯⋯どうしたの。何かあったの」 何か言ってあげなければととりあえず訊ねてみるが、ぎゅっと掴み、視線は上山だろうその方向へ向けたまま微動だにしない。 困り果てた姫宮の元に、伶介がボードを手に持ち、「たーちゃん、これ」と渡してきた。 「たーちゃんは、うえやまさんとおはなししたかったの?」 伶介の問いかけに何の反応もしないまま、かと思ったが、やがて首を横に振った。 伶介と顔を見合わせたが、首を傾げた。

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