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59.
「⋯⋯大河、小口さんいないけど、ママと一緒に遊んでもいいかな⋯⋯?」
緊張で声が震えている。
こんな態度見せたらいけない。けれども、まだ自分の子どもであるのに何を考えているのか分からない不確かさを思ってしまい、自然と接することができない。
大河は相変わらず照れ隠しでただ目を合わせられないのかもしれないけれども。
その空気を察してしまっているせいか、やはり目を逸らしたまま何の反応もせず、微動だにせず突っ立ったままだった。
姫宮と遊ぶことはさせず、一人で遊んでいるところをなるべく遠くで見守る形でいようか。
少し経ってもそのままの状態でいる我が子に「ごめんね、なんでもない」と言おうと口を開いたその時。
うん、と頷いた。
目が瞬いた。
今のように瞬いたその瞬間のように気のせいかと思うようなものだった。
「え⋯⋯? 大河、いいの⋯⋯?」
訊いてもいいのか、迷うようにそう訊ねると、今度は強く縦に振った。
え、という口の形のまま大河のことを見つめた。
本当に本当にいいのかと何度も訊いてしまうのを堪え、代わりにこう言った。
「そう⋯⋯いいの。⋯⋯ありがとう、大河」
こう言っている間も大河は一瞥もしなかったが、無視されるよりもだいぶ良かった。
「えと⋯⋯何して遊ぼうか。お絵描き? おもちゃでごっこ遊び⋯⋯っていうのかな、ハニワで遊ぶか⋯⋯あ、確か、この時間帯は『ハニワのだいこうしん!』をやっていたよね。それを一緒に観る?」
ルーティンとなってしまった遊びはさすがに飽きてはいないだろうか。けれども、他に新しい遊びは思いつかない。
気晴らしに公園に遊びに行くのもいいが、状況が状況なために行かせるのは控えていた。
やはり遊びの候補が狭まってしまう。
一人では何も思いつかない。
安野にでも訊いてみようか。
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