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「あ⋯⋯うん。ごめんね」
けど、断りもなく勝手に見て、大河に嫌われるきっかけを作らなくて良かった。
瞬きのようにほんの一瞬クレヨンを持つ手の動きが止まったことに気づかずに、気を取り直すように、何もなかったかのようにテレビの方へ目を向けた。
いつもよりも反応してくれたことが嬉しくて、舞い上がってしまったせいなのかもしれない。自重しないと。
姫宮には怯えたような、上山に見せたあの表情を見せたことがなかった。
それこそ上山に見せたようなあの表情を向けられてもおかしくないような気がするのに。
あの時言っていたように、姫宮と同様、大河も用が済んだから捨てられてしまったのだろうか。
"あの人"の真意が分からない。
こんな嫌なこと考えちゃいけない。それよりもそうだ、安野は上山に訊いたのだろうか。
やはり訊いてもはぐらかされてしまったのだろうか。それとも、今のように上山と二人きりになる隙がないからか。
どうなんだろう。やっぱり、訊いちゃいけないことだった⋯⋯?
どうしたらいいんだろう⋯⋯大河の不安を取り除いてあげたいけど、私はどうしたら⋯⋯──。
「──⋯⋯」
遠くの方で何かの声が聞こえる。
そのくぐもった声が次第にテレビの音かと思ったが、観ていたアニメの声ではないと分かった時、観ているうちにうたた寝していたことに気づいた。
大寝坊をしたクセにまだ寝足りなかったというのか。
勝手に寝たりしたら怒られて、最悪お仕置きされるのに。
しかし、視界が開けるのと同時に聞こえてくる声がはっきりしてきた時、ここはあの場所ではないことに気づかされる。
この声は、上山さん⋯⋯?
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