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79.※

「⋯⋯愛賀。そういうのは控えてくれるとありがたいのだが⋯⋯」 凝視していた御月堂が不意に顔を逸らした。 きょとんとしたのも束の間、耳まで真っ赤になっているのに気づき、口角を上げた。 「照れているの? 可愛い⋯⋯」 「照れてなど⋯⋯! いいから今すぐに履いてくれないか」 「愛液とせーえきでびちゃびちゃに汚れちゃったから、慶さまがおきがえさせて」 「⋯⋯は⋯⋯」 何を言っているんだという顔をする彼に緩みきった頬を見せた。 「ねぇ⋯⋯だめ⋯⋯?」 「⋯⋯それは⋯⋯さすがに⋯⋯」 「ね、してほしい⋯⋯」 「愛賀」 「おねがい、慶さま⋯⋯」 ちらりと見た御月堂に瞳を潤ませた。 罰が悪そうにすぐに逸らしてしまった彼だったが、難しそうな顔をして考え込んでいた。 そんな彼の横顔を見ていた時、急に閃いた姫宮は、下着に付着した白液を指先で掬い取ると、固く閉じた口へと運んだ。が、その時。 「⋯⋯なんだ、それは」 「なにって、せーえきだよ?」 「⋯⋯そういうのはいいから」 「なんで? おいしーよ? アルファさまの精液には敵わないけれど」 「⋯⋯」 言いながら押し付けようとする姫宮の手を掴み、強く、けれども、壊れ物を扱うように遠ざけようとしつつも、眉をこれでもかと寄せて、葛藤しているようだった。 「一口だけでもいいから、ねぇ⋯⋯」 「⋯⋯⋯分かった」 嬉しげに眉を上げた。 「じゃあ、慶さまっ」 「いや。⋯⋯私に着替えさせてもらいたい話の途中だっただろう。それを口にする代わりに着替えをさせよう。⋯⋯それでいいだろう」 ああ、そうだった。そういえばそんな話だった。 と思ったのも頭の隅に追いやって、少し考える素振りをした後、 「⋯⋯んー、わかった。今回はそうしてあげる」 「⋯⋯どこか不服そうだな」 「べつにぃー? なんでもない」 あそこに着替えがあるから、とクローゼットを指差した。 何か気にかかっていながらもクローゼットの方へ向かった彼の後ろ姿を見届けた後、後ろへと倒れ込んだ。

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