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「あの、姫宮様。私何か楽しませるようなことを言いましたでしょうか⋯⋯?」
さすがの上山でも、笑みを溢した姫宮に戸惑っているようだ。
「あ、いえ。⋯⋯慶様と同じようなことを言いましたので、つい⋯⋯」
「そうだったのですね。私のようなものでも姫宮様を楽しませることができたのかと」
話の流れからして、笑った顔を見せるのは失礼だったと上山の気遣いらしい返事から段々と思えてきた時、彼女はこうとも続けた。
「御月堂様の大河様に対する気遣いが、結果として姫宮様をそのように自然と表情を出させてくれるのですから、いい縁だったと私は思います」
「はい⋯⋯」
上山の前の雇い主が姫宮と関係があった、と知っているかどうかは分からないが、少なくとも大河と親子関係だったことから大方察しがついてしまうだろう。
だから、そういう意味を含んでいるかと思うと、はっきり返事ができなかった。
探りを入れられているようだと、上山を疑っている自分が嫌になるが、こんな気持ちもいつか払拭され、はっきりと返事ができたらいいのに。
「あの、上山さん」
「はい」
「⋯⋯できたらでいいのですが、大河が安心できる環境をお手伝いして頂けたらと思うのですが⋯⋯」
「ええ、もちろん。できる限りのことをしましょう」
人の顔色を伺うように言うと、上山はすぐに快く引き受けてくれた。
彼女の方からそうしてくれると申し出てくれたのだから、答えはとうに分かっているのに酷く安堵してしまっている。
「ありがとうございます」と告げ、一拍置いた後、ちょこちょこと大河がやってきた。
その手には一枚の紙を持っている。
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