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97.
「大河⋯⋯?」
「どうされましたか」
二人の間を割って入ってきたことにどうしたのかという疑問もあったが、何故か上山の方に足を向けていたのが主な疑問だった。
裏切ってしまったと思った相手に何の用があるのだろう。
姫宮らは大河の様子を伺っていると、大河がおもむろに持っていた紙を差し出した。
「え、私に⋯⋯?」
しゃがんでいた上山は、きょとんとしてしまった。
うん、と頷いた大河からためらいがちに受け取った。
「これは⋯⋯」
上山がそう呟いたきり黙り込んでしまった。
大河から何を受け取ったのだろう。
気になるが、勝手に覗いていいものなのか。
「何故、これを私に⋯⋯?」
大河から渡された物を見ても何も答えが得られなかったようだ。戸惑う声で本人に訊ねた。
しかし、会話の手助けとなるボードを大河は持っておらず、上山が知りたかった答えが返ってこなかった。
互いを見つめ合う形になっていたため、姫宮が代わりにボードを持ってきてあげようと思い、一歩足を踏み出した時だった。
「⋯⋯描いたのは、きっと私なのですよね。私の似顔絵を描くなんて、まるで普段姫宮様のことを描いているようではありませんか」
「それはどういうことですか」
気づけば言葉が出ていた。上山は「これです」と渡された紙を姫宮に見えるように向けた。
江藤より短いポニテをした女性が、姫宮の時と同じようににっこりとした顔で描かれていた。
紛れもなく上山だ。
恐らく今回が初めて描いただろう相手に、やはり何故描いたのだろうと改めて疑問に思ったが、姫宮を描くのと同じ意味であるなら、それはきっと。
「大河は上山さんのこと好きってこと、だよね⋯⋯?」
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