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確信は持てなかった。だから、疑問符を浮かべることとなってしまった。
合っているのだろうかと、鼓動が速くなっていくのを感じながら我が子の反応を見ていた。
上山も反応が気になるようで、一緒になって見ていた。
そんな二人に見られて気恥ずかしく思ったらしい大河が、目線を外した直後に小さく頷いた。
その瞬きした時の僅かな反応に見間違いかと思った。
それは上山も同じだったようで、「本当ですか」と再度訊ねると、うんうんと二度頭を振った。
そのやけくそな反応に何度も聞くなと言っているようで、現にいつもの遊び場に戻ってしまった。
「⋯⋯姫宮様、私は大河様の気持ちを素直に受け取っていいのでしょうか」
小口が大河に何かを言っていて、だが、大河は全く相手をせず、おもちゃに目を向けている姿を見つめていた時、ぽつりと上山が言った。
半歩遅れて上山の方へ目を向けた時、小さく笑みを含んだ顔をした。
「いいと思います。⋯⋯さっき私が自信のない言い方をしてしまいましたが、上山さんの絵を描くってことは好きだからだと思います。ですから、受け取っていいのだと思います」
口が利けない大河なりのコミュニケーションであり、愛情表現。
裏切ってしまったと思っていたから、上山はもらう資格はないのだと思っていたのだろう。
けれども、そうではないと暖かい贈り物がそれを証明してくれた。
それは同時に、口が利けなくなったのは上山ではないという確証にも繋がった。
「大河様がお母様以外にそのような気持ちを向けるとは思いませんでした。姫宮様に向ける気持ちとは比べものにならないものだと思いますが、それでも少なからずそのような気持ちを向けるとは思わなく、非常に驚いてしまい、思わず訊いてしまったのもあります」
「あ⋯⋯確かにそうですよね⋯⋯」
「ですが、気持ちもこの可愛らしい絵も無下にできませんし、ありがたく頂戴いたします」
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