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104.
「編みぐるみというのはどうやって作るものなのですか?」
「あ、姫宮さん、存じ上げませんでしたか」
「はい⋯⋯普通は知っているものですか?」
「普通⋯⋯う〜ん⋯⋯手芸が好きな人は知っている、感じですかね?」
同意を求めるように隣にいる上山に目を向けると、「そのような感じです」と目配せをした。
「姫宮さん、その持っているハニワは何でできていると思いますか?」
「何、で⋯⋯」
目線を落とす。
吸い込まれそうな真っ黒な瞳と目が合い、それから目線を外し、身体部分を触る。
肌触りのいい柔らかい素材。縦と横が絡み合っていることは分かったが、この素材はなんだろうか。
縦を辿ってみても、横に辿ってみても続くそれを指でなぞっていくうちになんとなく分かってきた。
「糸、ですか⋯⋯?」
間違えているかもしれない。恐る恐るといったように答えると、瞬間江藤は目を大きく広げた。
「正解です! 正確には毛糸と呼ばれる類の物で、マフラーやそのぬいぐるみを編むのに適しているんですよ」
わっと歓声を上げる江藤に正解したのもあって、照れくさく感じ、はにかんだ。
その様子に気づいてなのか、江藤も似たような表情をしていた。
「さて、どうやって作るかですが、それは一緒に作ってみたら分かるかと思います」
「実はさっきまで、私も江藤さんに教わりながら編み込んでいたのですよ」
「そうだったのですか」
だから、揃って来たということなのか。
しかし、上山も同じ編み物ということか。
「ちなみに⋯⋯上山さんも編み物でしょうか」
「はい。この際言ってしまいますが、姫宮様が今回作ろうとしている編みぐるみにしようと思っています」
丸被りではないかと思ったが、江藤が言うように姫宮のベッドに並ぶハニワ達みたいにいくつあってもいいと思えるのなら、江藤が言う許容範囲といえよう。
「今夜はもう遅いですし、明日から一緒にやっていきましょうか」
「はい、よろしくお願いします」
にこりと笑う江藤らに姫宮は頭を下げたのだった。
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