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106.
「⋯⋯あまり寝つきが良くないのです。⋯⋯すみません、迷惑をかけてしまって」
「迷惑だなんて全然思ってませんけど、その調子ですと、大河さまが心配すると思いますよ」
小口が言うように、お絵描きをしていたらそばに寄っても気づかないぐらい集中しているはずの大河が、姫宮のそばに寄って、顔を覗き込むようにして見ていたのだから。
今、一番に心配をかけたくはないのに。
「大河、ごめんね。大丈夫だから⋯⋯」
「まあ、どっちにしたって一旦寝たらどうです? その様子ですと、寝る時間までも持たないでしょ」
「あ⋯⋯はい」
ここで「大丈夫」だと言っても、大河の心配は拭えないだろう。
ここは素直に従おうと思い、「大河さまのことは見てますんで」に「よろしくお願いします」と返事をし、そのままソファに横になった。
この場所では邪魔になってしまうかもしれないが、自室へ行く気力が途端になくなってしまったのだ。
現に横になった途端、すぐに微睡み始めた姫宮に小口は独り言のように呟いた。
「そんな支障を来たすなんて元も子もないですよ。そこまで無理することなんてないのに」
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