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110.
悪戦苦闘していた編み物も、胴体が出来上がっていくうちにつれ、少しずつできるようになっていき、同時に形ができていくのが目に見えてきた時、喜びが溢れてきた。
それから今度は手の部分を編むことになり、それが胴体とは違う形であるため、またそこで新たな試練と言わんばかりに四苦八苦したものの、どうにかこうにかそれらしい形にはできた。
「⋯⋯手、変ではありませんか?」
「いえいえ! ちゃんと形にはなってますよ。大丈夫です!」
江藤がそう言うならと思いつつ、「さ、胴体に縫いつけましょう」と言う彼女につられて、縫いつけていった。
目の時は左右がややずれてしまい、失敗してしまったと思った。
まさか途中で違う色の毛糸で編むとは思わなく、本当に編み物を一度もしたことがない者がするものではないと思った。
けれども二人の提案がなければ、大河の誕生日が間近に迫っている中でも、何も思いつきはしなかっただろう。
だから、少し歪でもご愛嬌だと思えば。
大河もそう思ってくれたらいいのだが。
そして、その提案をしてくれたうちの一人、上山は、姫宮が胴体を編んでいる時から姿がなかった。
そのことを江藤は、「急な仕事が入ってしまって、これからしばらく一緒にできないのです」と申し訳なさそうに言った。
姫宮が知らないだけで上山も忙しいのだろう。江藤も本当はほぼ毎夜姫宮に教えている暇もないのだろう。
だから、それ以上は何も言わず、「そうなのですか」と代わりに返した。
それは仕方ないことだ。それに彼女は教わらずとも一人でできてしまう。
だからいい。
「大河様っ!?」
江藤が突如、素っ頓狂な声を上げる。
姫宮も彼女が見る方へ目を向けると、ドアを半分開け、こちらの様子を伺っている我が子の姿を捉えた。
度肝を抜かれた。
何か音はしたとは思ったが、江藤の声や編み物に集中していたものだから、気のせいだと思ってしまった。
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