111 / 139
111.
このままだと内緒で作っていたプレゼントを見られてしまう。
しかし指先一つも動けずにいると、江藤が立ち上がった。
「大河様、こんな夜遅くにどうされたのですか? 眠れないのですか?」
江藤が問いかける。当然のことながら大河からの返事はない。
が、恐らく姫宮の手元にある物に気づかせないようにしているかもしれない。
そう思った時、姫宮は慌ててサイドチェストの引き出しに押し込んだ。
これでひとまずは大丈夫だと思いたい。
「小口はどうしたのです?」
再び江藤が話しかけている。
江藤が言うように大河は小口と一緒に寝ているはずだ。そして、恐らく小口も姫宮が大河に内緒で誕生日プレゼントを用意していると知っていると思われる。だから、何かと理由をつけて大河のことを引き止めようとするはず。
しかし、大河もまた頑なで強引なところがある。 かいくぐって来たのかもしれないが、それなのに小口がいつになっても来ない。
そっと江藤の背後から顔を覗かせる。
変わらずに半分だけ顔を出しているようだったが、さっきと違うのは恨めしそうな雰囲気を出しているように感じられた。
安野が姫宮に話しかけているところが気に食わないのと同じ理由だろうか。
「⋯⋯大河、何かママに用かな」
立ち上がり、大河の方へ足を進めながら言う。
ボードを持ってない大河は口で言わずとも怒っているような雰囲気を醸し出していた。
「入ってきてもいいんだよ⋯⋯?」
江藤がいることで嫌がっているかもしれないが、それでも何か用があって来たのだろうとそう言ってみる。
目線を合わせるようにそばにしゃがんでは顔を覗き込むように見てみると、頬を膨らませてむくれていた。
が、それは同時に何か言いたいことがあるのかもしれないとも思った。
ともだちにシェアしよう!

