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114.
何度目かそのようなことをしていたが、やはり息子が何を伝えたいのかがさっぱり分からない。
それとなく分かったのは、二文字の言葉。
ハニワ、でもない。ましてや誰かの名前でもない。
そのうち痺れを切らしたのか、ベッドに登った大河がハニワを抱えて戻ってきた。
そして、それらを姫宮に押し付けた。
それでも分からなく、しかし流れでそれらを受け取る形となった困惑する姫宮のことを指で差し、また口を動かした。
さっきと同じような口の動き。それは恐らく同じ言葉を発しているらしい動き。
姫宮のことを指差して、同じ言葉を二度言っているつもりの口の動きに、ハッとした。
これはもしかしたら。
「⋯⋯マ、マ⋯⋯?」
強ばっていた口をゆっくりと動かした。
それを発した瞬間、うんうんと頷いた。
合っていた。大河はそれを言いたかったのか。
しかし、何故『ママ』と口を動かしていたのか。
その疑問が今度はハニワを指差し、それらを押し付ける仕草をしたことから氷解した。
「ハニワは⋯⋯ママのだから、持って行けない⋯⋯ってことかな」
だが、自信なさげに口にすると、大河は食い気味に頷いた。
目を見開いた。
大河がそのようなことを思っていたなんて。
「⋯⋯大河、優しいね。でも、いいんだよ。大河の元にあった方がハニワ達喜ぶと思うから」
そして、江藤も喜ぶ。
とはいえ、彼女は今度の大河の誕生日に改めて作った物をあげるようだったが、それとこれは別だ。
じっと姫宮の腕の中にいるハニワ達を見つめていた大河だったが、やがてゆるゆると首を振った。
大好きな母親が言っていたとしても、このハニワ達はもう姫宮の物だから大河の方がハニワのことが大好きであっても、持って行かないということか。
やはり頑固だ。誰に似たのだろう。
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