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116.
並べてあるハニワの一つを取って、大河の前に差し出す。
それでもなお反応しない、かと思いきや、ハニワの短い手を摘んだ。
その反応に、小さく息を吐いた。
一応は納得してくれたようで良かった。
摘んだまま上下左右に動かしている大河の様子を微笑ましく見ていた時、ふとあることを思った。
「そういえば、抱き枕はどうしたの」
すると大河は、姫宮達がいる側とは反対の壁の方へ指を差し、抱きつく仕草をした。
壁の方というと大河の部屋のことで、大河以外というと小口だろうか。
「小口さんが、大河の抱き枕を使っているの?」
そう口にすると、分かってくれたと言わんばかりに大きく頷いた。
大河が思っていることが分かって良かったと胸を撫で下ろしたのと同時に、他のことも分かった。
小口は大河が起きて、部屋から出て行ったことも分からないぐらいに爆睡していることを。
もしかしたら、あの後江藤が部屋に様子を見に行ってくれたとしたら、そのことに気づき、しかし、今もこうして来ないということは、二人きりにするのを配慮してくれたのかもしれない。
一日中、小口は大河の付きっきりで疲れきっているのだろうと申し訳なくも感じ、何かと気にかけてくれている江藤にも改めてお礼をしたいと思った。
「⋯⋯じゃあ、今日はこのハニワを抱き枕代わりに使ってもいいよ」
これだけじゃなくても、これもこれもと次々とハニワ達を大河に渡した。
姫宮がそのようなことをしてくるとは思わなかったのか、驚いたように一瞬、手が止まったが、受け取った。
と、そうしているうちにやや埋もれる形となっていた。
「あ、ごめんっ、大河、大丈夫?」
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