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ハニワ達をどかし、大河の顔が見えた時、思わず息を吐いた。 と、束の間、最初に渡したハニワをぎゅうっと抱きしめていた大河が口元を緩めたように見えた時、えっと声が漏れた。 安心した、ということか。 面白い、とは少し違うように思うが、何はともあれ機嫌を損ねたわけではなさそうでホッとした。 大河に布団を掛けてあげ、自分にも掛け、改めて大河と対面する形となった。 大河と一緒に寝ることは今回が初めてだ。これから先もないだろうと思っていた夢が現実となり、いや、もしかしたら今見ている現実が夢かもしれない光景に姫宮は信じられず、それから対応に困った。 流れで一緒に寝る形となってしまったが、元々大河は姫宮と話がしたくて来たことを、そういえばと思い出した。 「そういえば、大河はママと話がしたくて来たんだったんだよね。⋯⋯一緒に寝たかったわけじゃなくて」 大河に訊いた時、人知れずチクっと胸を痛めた。 本来自分がすべき役割を未だに少しも果たせずにいる自分が惨めで仕方なかった。 そんな自分でも、慕ってくれているようでわざわざ来ては、まだ口が利けそうにないのにこうして話がしたいと思っているようだから、少しは親としての務めはできていると思いたい。 大河はというと、どういう反応をしたらいいのかなのか、頷くことはなく、そわそわとしているようでハニワの手を触っていた。 「困るような言い方をしてごめんね。⋯⋯話をしようか」 とはいえ、大河は言葉を発するのが難しいため、姫宮が話すのを聞く形となる。 息子が何の話をしたいのか分からないために余計にだ。 「ママ、話すのが苦手だし、話す話題もないから面白くないと思うから、早く寝っちゃってもいいと思うんだけど⋯⋯」 また後ろ向きな言い方を言ってしまった。 落ち込んでいる姫宮に、大河は首を横に振り、そして目をキラリと光らせたように見えた。 何か期待しているように思える眼差しに、その視線から逃れるように目線を外した。

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