118 / 139
118.
そんな期待されるほどの話題はないのだけど、と姫宮は困りながら何か話題になりそうなものを考えた。
大河が喜びそうな話題といえば、ハニワだ。しかし、ハニワのことで話を広げられる自信がない。
「今日の『ハニワのだいこうしん!』、北海道だったね。⋯⋯ハニワ達、あまり見ない格好していたよね、刺青? みたいなのもしていたし⋯⋯」
青い生地に何かの模様らしいものが描かれたバンダナのようなものを頭に巻き、それと同様のチョッキのようなものを羽織り、いつもの如く町や死者を襲っているようにしか見えない大行進をしていた。
そういえば、小口がぼそっと何かを言っていたような気がする。
「ア、イヌ⋯⋯って言っていた、かな。そういう人達が北海道にいたんだって。日本でもまだ知らないことがたくさんあるね」
そうなのだ。まだ知らないことだらけだ。
大河の年齢を考えれば、姫宮は成人を過ぎていたはず。それなのに、親として自分の子どもに教えられることなんて何もない。
同年代の小口の方がよっぽど知っていて、資格があるのではと思ってしまうほどだ。
「あ、⋯⋯っと、大河は本当にハニワが大好きだよね。なんでそんなにも大好きになったのかな」
途切れそうな話題を慌てて変えた。
だが、こんな質問をしても無意味だと一生懸命言葉を発っしようとする息子に、「あ、ごめんね」と謝った。
「じゃ、じゃあ、そのハニワ達の中だとどのハニワが好きなのかな」
どうにかこうにかまた話題を変えてみる。
大河は迷っているようで自分の周りにいるハニワ達を見ては悩んでいるようだった。
大河にとっては究極の質問だった。
この話題も酷な話だっただろうかと、今すぐにでも話を変えようと焦りを募らせながらも何かないかと巡らせる。
ともだちにシェアしよう!

