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119.
と、そんな時。
大河がおもむろに持っていたハニワを突きつけてきた。
深く考えていたせいか、大河が急にしてきたことにすぐには気づけず、間を空けてハッとした姫宮は、意識をそちらに向けた。
「そのハニワが一番好きなの?」
そういう意味なのかどうなのかはっきりと分からない。姫宮は、確信が持てないはっきりとしない口調で訊いた。
そう訊くや否や、大河は半身を起こし、うんっと大きく頷いたかと思うと、そのハニワをぎゅうっと強く抱きしめた。
それはもう形が変形してしまうぐらいに。
可哀想とも思えたが、大河の一番好きなハニワが分かって嬉しく思い、「そう」と軽く微笑んだ。
「大河にこんなにも抱きしめてもらえたら、このハニワも喜んでいると思うよ」
くの字に体が反り返っているハニワの頭を撫でる。
すると大河は、腕の力を緩めたかと思えば、再び抱きしめていた。
とても気に入っているようだ。江藤に会ったらこのことを言っておこうか。
「寒いから布団に入ろう」と促し、入り直した大河を布団越しに触れた。
ぴくっと、目をまん丸にした。
こないだ江藤がそうしてきた時の自分と同じような反応をする。
小さく笑った。
「話をすることがなくてこれで終わりだけど、子守唄⋯⋯歌ってもいい?」
我が子と寝れると思わなく、もしかしたら二度もないかもしれないこの機会にしてみたかったことをしたかった。
江藤のようには上手くないし、そもそも最初に安野達が慌てふためくぐらい驚かせてしまった実力だ。大河は驚いて、最悪歌というものを嫌ってしまうかもしれない。
そんな嫌な考えがふと過ぎった時、「やっぱりなんでもない」と口にした。
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