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121.
テーブル上に置かれたケーキに差したロウソクの火が、薄暗い部屋をぼんやりと灯していた。
「大河、火に向かって息をふうって吹きかけてみて」
まじまじとケーキを見つめる大河に姫宮はそう言ってみると、我に返ったかのような顔をした大河はそっと吹きかけた。
しかし、やはり弱々しく息を吹きかけたものだからロウソクの火はどこ吹く風といった様子で揺らめく程度で消えそうになかった。
手助けしてあげないとと、隣に座っていた姫宮はすかさず吹きかける。が、あと一本を残してしまった。
周りにいた誰かが、あっと思わず声を漏らしてしまっていた。
「⋯⋯えっ⋯⋯と、大河。あと一本吹き消そうか」
そう促すと、さっきよりも強く吹いた。
「「「大河様、誕生日おめでとうございまーす!!!」」」
それが合図だったかのようにパッと電気が付き、光を遮っていたカーテンを引いたのと同時に安野達がそう言って、パァンとクラッカーを引いた。
部屋がやや煙たくなり、姫宮は密かに咳き込んでいた。
それは大河も同じようで咳き込んでいる様子だった。
「二の舞じゃないですかー」
「あの時よりも本数は少なめにしてもダメでしたか⋯⋯」
「そもそもしないという選択肢はないのですか」
「それは無理です! 我が姫宮様のご愛息の記念すべき日なのですよ! ここぞとばかりに盛大にやらなくてどうするんですか!」
「そのご愛息が迷惑がってますけどね」
涙目となり、しかしとて負けず劣らずの眉を潜めている大河の様子に、姫宮とは反対側に座っている伶介が「たーちゃん、だいじょうぶ?」と声をかけてくれた。
その伶介も咳き込んでいた。
「申し訳ございませんっ、大河様っ! どうかこれでお心変わりしていただけましたら⋯⋯!」
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