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両手で持てる程度の四角い包みを差し出していた。
このタイミングでプレゼントをあげる話だっただろうかと首を傾げる。
「安野さん、物で釣ろうとするなんて卑怯ですよ!」
「職権乱用」
「私も大河様に喜ばれたいから、渡しちゃいますよ!」
「カオス」
やっぱり安野の独断かと思い、されど小口が言うように主に安野に向かって非難轟々のようなことを口々に言う様は、混沌といえよう。
自分もあげるべきか。それともやはり当初話していたようにケーキを食べ、ひと段落した後にあげた方がいいかもしれない。
どさくさに紛れて安野から受け取る形となった大河はらその包みをまじまじと見ていたり、「こうするしかなかったのです!」と開き直る安野に対して、「良くない」「予定通りにすべき」「私達が丹精込めて作ったハニワのケーキが、蔑ろにされている方が可哀想だと思いませんか」と今井、上山、江藤の順で返していた。
三人にしかも正論を言われたせいか、安野は何にも言えなくなったようで、「ぐぬぬ⋯⋯」と唸っていた。
そんな時。来客を告げるチャイムによって一瞬にして場が静まり返った。
誰なのだろう。次に口を開いた時は、その疑問を口々に言い合っていた。
姫宮も口に出さずにいたが、そのうちの一人だった。
とすぐにインターホンに向かった安野が映し出された相手と一言二言話し終えた後、こちらを振り返った。
正確に言うと、今井達の方を向いていた。
その時の引き締まった表情を見た時、姫宮は少なからず察した。
それは今井達もそうで、顔を改めた。
玲美や伶介は初めて見る光景で何が急に起きたのかと、緊張した面持ちで安野達を見ていた。
「姫宮様方。申し訳ありませんが、少しの間お待ち頂けますか」
「はい」
「ええ、いいですけど⋯⋯」
玲美は何のことかと混乱が隠しきれてないといった調子で返事をするのを、安野は一礼し、「今井、上山、江藤。お迎えに行きましょう」と言って、揃って出て行った。
「行ってら〜」と当たり前に待つ側の小口は変わらずの軽い調子で言っていた。
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