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123.
安野達が出て行った先を親子揃って見ていたが、玲美が不意に訊ねる。
「え、姫宮さん。安野さん達はどの方をお迎えに行ったのですか?」
「恐らく、安野さん達は──」
言葉を遮るように扉が開かれる。
玲美はやって来た人物にあっという顔をし、姫宮はというと頬をほんのりと朱に染めた。
大河なんて渡されたプレゼントを見ていたはずなのに、急にそれをテーブルに置いたかと思うと、こちらに両手を差し出していた。
「ちょうどいいところだったな」
「慶様⋯⋯」
「御月堂様、ご無沙汰しておりました」
咄嗟に立ち上がった玲美に続いて、伶介もそれに倣ったが、「そこまでの挨拶はいい」と手で制し、着席を促した。
二人はそれに従い、座り直している間、大河が服を引っ張ってくるものだから、「どうしたの」とそちらに意識を向けた。
椅子から降りた大河はそばに寄ると、あろうことか登ってこようとするのだ。
突然何をやりだすのかと半ば分かっていないながらも、危ないからと抱き上げ、膝上に乗せると、大河は満足そうな顔をして頭を胸に預けた。
「大河はしばらく見ないうちに、母親に甘えるほどずいぶん仲良くしているようだな」
「最近、少しずつ仲良くはなってきたなとは思いましたが、このようなことは今回が初めてで、正直戸惑ってます⋯⋯」
頬を擦り寄せていた大河が不意に御月堂の方を見た時、御月堂の眉が一瞬動いたような気がした。
扉を開けていた安野を始め、三人は微笑ましいといった顔で見てくるものだから、困った表情を見せる自分がおかしいのかと思ってしまったが、それにしたって大河が今までしたことがないことを脈絡もなくしてくるから、このような表情が出てしまうのは当然といえよう。
よく分からずとも我が子の頭を撫でるとうれしそうな表情を見せ、その表情に姫宮も顔を和らげた。
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