124 / 139
124.
「まるで聖母のような美しさと優しく柔らかい雰囲気⋯⋯天に召されそう⋯⋯」
「右に同意⋯⋯と言いたいところですが、御月堂様らが来られたのですから、改めてやりましょうね」
手を組んでうっとりとする安野を今井が押すのを、上山と江藤も手伝いながらそれぞれの位置に行こうとしているのをなんとなく眺めていると、御月堂と松下が近づいてきた。
「大河様の記念すべき日にお招きいただき、誠にありがとうございます」
「いえ、こちらこそ⋯⋯」
「大河様はこんなにもたくさんの方に祝われて、驚いてお母様のところで安心していらっしゃるのでしょうかね」
顔を見向きもしない大河であったが、松下はそれでも安野達のように微笑ましげに見つめていた。
そうなのだ。まさか御月堂達が来るとは思わなかったのは姫宮も同じで、しかしもしかしたら御月堂と張り合いのようなものをしているのかもしれないと、彼が来た時の大河の行動をふと思い出し、されど松下の言ったことにそういうことだろうと無理やり納得させた。
それから気になることがあった。
「あの⋯⋯」
「はい?」
「⋯⋯慶様と、松下さんは大河の誕生日をご存知だったのですか?」
「安野から聞いた」
御月堂が答えた。
その時御月堂らの背後をちらりと見ると、安野が澄まし顔で会釈した。
今回の彼女の行動は称賛に値するもので、姫宮にとっては来てくれて嬉しく思った。
「まさか来て下さるとは思いませんでした」
あの事件がいくらか落ち着いてきたとはいえ、彼の元々の立場を考えると多忙だ。
いくら安野が教えてくれたとはいえ彼自身が来るのは難しいことだろう。
ともだちにシェアしよう!

