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ポケットに入れる習慣を身につけたはずなのに、やはり染みつかないと自身を責めつつも、今は大河のためにと気を取り直した姫宮は、伶介が言っていたハニワのケーキに携帯端末を向けた。
今回は特に失敗してはならない。
ちゃんと撮れますようにと、慎重に撮ることを心がける。
「そこまで緊張なさらずとも撮れますよ」
不意に声が掛かる。
驚いて顔を上げると、そこにはいつの間にか上山がそばにいた。
「驚かせてしまい申し訳ありません」と謝罪を口にした後、こう言った。
「なるべくリラックスさせた状態で、撮りたい対象を画角に収め、ぶれないためにスマホを揺らさずに⋯⋯テーブルに肘を着いてみましょうか。そうしましたら、ぶれにくいと思います」
上山が丁寧にそう教えてくれた通りにし、「さ、撮ってみましょう」という声がけと共にタップした。
撮ったのを見返してみると、ぼやけてはおらず綺麗に撮れていた。
「綺麗に撮れましたね」
「上山さんのおかげです」
「姫宮様のお役に立てて何よりです」
笑みを含んだ顔を見せる上山に姫宮も同じような顔をして返すと、「では今度は大河様を撮ってみましょう」と言われ、大河に向けた。
こっちにカメラ目線を向けていた大河に対し、「たーちゃん、ぼくもいっしょにいい?」と伶介が言ってきたのを、大河は躊躇うことなくいいよという意味で首を縦に振った。
「ありがとう! じゃあね、たーちゃん。おれいに、とっておきのぽーずをおしえてあげるね」
伶介が手で何かを形作っているのを、大河は真似しようとしている。
何をしているのかと思った瞬間、できたらしいそれを姫宮が持っている携帯端末に向かって見せた。
それはいわばピースサインだった。
伶介が教えてくれるまで大河に教えてなかったと失念し、されどとっておきと言って今日という日にそれを教えてくれた伶介に今は心の中で感謝を述べ、笑みを含んだ。
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