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「二人とも撮るよ。ハイ、チーズ」 掛け声とともにタップした。 撮れただろうか。 一抹の不安を抱え、今撮った写真を見返してみた。 少し斜めになってしまっていたが、綺麗に映し出されていた。 大河のどことなく嬉しそうな顔と伶介の満面の笑みがとても愛らしい。 「今も撮れて良かったですね」 「はい」 上山に返事する声が自分でも分かるぐらいに弾んだ声音だった。 自然とそんな声になるくらい嬉しく思っている。 「ぼくもみていいですか?」 「あ⋯⋯どうぞ」 立ち上がり、大河と伶介の間に入り、今撮った写真を見せる。 「わぁ、とれてる! たーちゃん、とれてるね!」 歓声を上げた伶介は大河に言うと、我が息子はうんと二度頷いた。 大河も伶介も喜んでくれて良かった。 「あの、たーちゃんまま!」 「え、なに?」 「よろしければなんですけど、このしゃしんほしいんですけど⋯⋯」 「え、あ、これで良ければいいけど⋯⋯」 欲しいと言ってくれるまで喜んでもらえて、こちらも嬉しくなり、そうしてあげたいのは山々なのだが、どうやってあげればいいのだろう。 「伶介様。後日プリントアウトしたのを差し上げますね」 「はい! ありがとうございます!」 写真を写したままの携帯端末で指を迷うように動かしていた時、安野が代わりにそう言っていた。 それで納得したらしい伶介は嬉しげにお礼を言っていた。 玲美が「良かったね」と伶介に言い、安野には「お手間を取らせます」と頭を下げていた。 一番頭を下げなければならないのは自分だ。 安野が機転を利かせなければその考えに至らなかったのだから。 言わなければと安野の方へ顔を向けた時だった。 「私にもその写真をくれないだろうか」

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