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御月堂の不意に言った言葉に、どこからか「えっ」という声が上がった。 もしかしたら自分が無意識に言ってしまったかもしれないと、咄嗟に口元を手で覆った。 「何かおかしな発言でもしたか?」 「いえっ、そのようなことは⋯⋯。姫宮様と同様にそのご愛息である大河様と伶介様を等しく愛でたいということですもんね。分かりました。松下さんを通じて後のほど送らせていただきます」 「そうしてくれ」 安野が会話し、それで話が終わったと言わんばかりに口を閉じた御月堂に周りはそれとなく互いを見ていた。 そんな時。大河が姫宮の腕を引っ張ったことにより、そちらに意識を向けた。 「え、大河? どうしたの」 『ままもしゃしん』 掴んでいた手を今度はボードに持ち替えそう押した。 「今度はママと写真が撮りたい、ってことかな⋯⋯」 自信がない口調で応えると、大河はそうだと言っているかのように強く頷き、そしてまた小さな腕を目一杯伸ばした。 二度目になるとさっきしたことだと分かる。 苦笑しつつ、テーブルの上に携帯端末を一旦置き、抱っこしてあげ、大河が座っていた席に着いた。 「じゃあ、私が撮りましょうか」と玲美が手を挙げてくれたので、「では、お願いします」と託した。 その間、自分は写ってはいけないと伶介は席から外し、母親の後ろへと行くという配慮をしていた。 「ではいきますよ。はい、チーズ」 カシャ、と小さくシャッター音が聞こえた。 すぐに玲美が自身の撮れ具合を見、それから親子揃って笑い合っていた。 何か面白い写真が撮れてしまったのだろうか。 「姫宮さん、見てください。とてもいい写真が撮れました」 顔を綻ばせたままの玲美がそばに寄り、自身が撮ったものを姫宮に見せた。 姫宮の膝上に乗せた大河がピースしている写真。 一見何の変哲もない様子であったが、二人の顔を見ると目を見開くこととなった。

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