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136.

大河は惚れ惚れとした目で見ていたが、不意に姫宮のことを見てきた。 そして次に口を動かした。 ママ。 嫌な顔が出てしまったのかと思ったが、再び「まま」と口を動かしては持っているハニワの編みぐるみを指差して首を傾げたことから、「これはままの?」と訊いているようだった。 「その編みぐるみは、大河のだよ。上山さんが大河のために編んでくれたの。だから、上山さんにお礼をしようね」 考えているようなぼんやりとした顔をしていた大河だったが、正座をしてことの成り行きを見ていた上山の方を向くと、頭を軽く下げた。 その姿を見た上山は小さく驚いている様子だったが、ふと笑みを見せた。 「いえ⋯⋯どういたしまして」 その声が震えているように聞こえた。目にもうっすら涙を浮かべているようだった。 ずっとあったしこりが取れたような、報われたかのような彼女の様子に、これはこれで良かったと思うようにした。 「ようやく⋯⋯! ようやく私の番ですね!」 噛み締めるように江藤が「これをどうかお受け取りください!」と深々と頭を下げて大河に渡した。 大河だと両手で抱える程度の紙袋に入っていた。 「さ、開けてみてください」と江藤が言うや否や、大河はシールで止められた箇所を破くように開いた。 中から出てきたのは、やはりハニワではあるが、大きさの違う二組らしいもの。 それは平べったく、人でいうところの足の部分から嵌められるようになっているようだった。 「私、姫宮さんにあのようなことを言いましたが、やはりさすがにと思いまして、急遽手袋に変更致しました」 気まずそうに言う江藤の傍ら、小さい方を片手に嵌めた大河は手を振る仕草をしたり、ハニワの両手に指を嵌められるらしく、手を上げているような動きをさせていた。 「手袋でもありパペットみたいなハニワを編んでみたんです。姫宮さんの分も編んだので良かったら嵌めてみてください」

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