137 / 139

137.

大きい方はまさかの姫宮の分だった。 内心自分の誕生日でもないのにいいのかと気が引けながらも、促されるがままに嵌めた。 サイズがぴったりなようで、とても手に馴染んでいた。 姫宮も大河と同じようにハニワの手を動かしていると、大河が自身のハニワを近づけさせてハニワの首らしい箇所を前後に動かし、両手を口元に寄せていた。 まるで話しかけているような仕草だと思った姫宮は、口元を綻ばせた。 そう思った姫宮は、聞いているよというように手を閉じたり開いたりする仕草を見せた。 「あぁ、おふた方がお気に召したようで冥利に尽きます⋯⋯」 大袈裟に喜ぶ江藤に苦笑していたのも束の間、「⋯⋯姫宮さんも頑張って編んだぬいぐるみ渡しましょう」と不意に耳打ちし、袋を渡してきた。 その袋は、江藤と一緒に包んだもの。 この中には大河のために毎夜のように編んでいたハニワの編みぐるみが入っている。 今のおかげで少しは渡す気にはなってきたが、やはり一番は喜んでくれるかどうかという気持ちがあった。 持つ手に力が篭ってしまっていたのを、慌てて持ち直した。 緊張する。手が若干震えている。渡さないと。 「た、大河、ちょっといいかな」 上擦った声が出てしまった。 その声に大河も気になったようで、姫宮が何故か緊張している雰囲気を感じてしまったからか、強ばっているように見えた。 早く言って安心させないと。 「大河、にね、渡したいものがあるんだ」 そう言いながら、持っている袋を差し出した。 「受け取ってもらえるかな⋯⋯?」 片手にハニワを嵌めたままで、まるでそのハニワから贈られたように見える。 大河は姫宮から差し出されたそれをまじまじと見つめていたが、やがて手に取った。 ひとまず良かったと小さく息を吐いた。 ところが大河はすぐに開けようとはせず、袋の絵柄を見るように見回していた。 他の人達とは違うその反応にどうしたのだろうと思ったが、言いはしなかった。 姫宮の一言で興味を無くしてしまったら、それこそしばらく引きずるほど落ち込んでしまう。 だから、大河が開けるまで待っていようとした。

ともだちにシェアしよう!