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食えないやつ③

胃が縮むような痛みに苛まれる。自然と眉間のシワも深くなっていった。 「生徒会の集まりの時間が始まるよ」   輝の隣で立ち止まった志乃が、わざとらしく彼の肩に触れる。まるでそうするのが当然のような仕草だ。輝も気にしていないのか、何事もなく腕時計を確認している。  あからさまな態度に腹が立つ。 (やっぱり性格悪いじゃないか)   舌打ちをしたい気分を押さえ込む。 「ああ、もうそんな時間か。残念だ」   名残惜しそうな視線が蓮斗へと注がれる。そのことに微かな優越感を感じた。苛立ちも少しだけおさまる。輝は志乃へ一切視線を向けない。どうやら恋愛感情はないらしい。その代わりに輝はその瞳に蓮斗だけを映してくれていた。シリルであればありえなかったことだ。前世では、熱を帯びた視線が他の誰かに向けられる瞬間がなによりも嫌いだった。だから、今この瞬間がたまらなく嬉しい。 「……都城、僕達も行こう」 「お、おう」 ____嬉しいからなんだって言うんだ……。輝を好きになるなんてありえない。そうじゃなくちゃいけないんだもの。   輝の肩に添えられた細く白い手を一瞥し、目をそらした蓮斗は背を向けて歩き出す。都城がその後ろを慌ててついてくる。アリステラだった頃の胸の痛みが蓮斗の心を覆う。仲睦まじく過ごすシリルとルキナの姿が脳裏にこびりついて離れない。

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