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お疲れ様会①

 中間テストは思いのほか満足の行く結果に終わった。勉強した成果が出たのか、スラスラと解くことができたため、蓮斗はご機嫌だ。  自分の席に座りぐ〜と伸びをして、こった身体を解しながら開放感に浸る。クラスメイトも同じように、テストの終わりを喜び合っている。テスト期間中は授業が早く終わるため、帰れる時間も比例するように早まる。最終日の今日も例外ではない。 (都城と学園内のカフェでテストが終わったお祝いでもしよっと♪) 部活も今日までは休みのはずだ。メッセージを送りスマホの画面を閉じると、帰り支度を始める。教室を出て外通路へと向かう。辿り着くと、都城がスマホをいじりながら待っていてくれた。なぜかその横には輝が居て、心臓が跳ねる。 「っ、なんでいるわけ!?」 「やあ。テストお疲れ様。さっきたまたま都城君と会ってね。蓮斗と一緒にお疲れ様会をすると聞いたから無理言って参加させてもらえることになったんだよ」 「とーぎー!」  思わず都城へとジト目を向けると、気まずそうに目をそらされた。蓮斗は頬を膨らませて怒る仕草をする。けれど、内心は輝が居て少しだけ嬉しかった。屋上で過ごした日以来、輝のことが頭から離れず気になって仕方なかったからだ。  怒りながらもご機嫌気分はそのままに、蓮斗は二人と一緒にカフェへと向かう。傍から見れば、不思議なメンバーのようにも思える。けれど、蓮斗は気にしない。輝と関わることを拒否するのは止めたからだ。それに、見られることには慣れている。アリステラだった頃は嫉妬と尊敬の眼差しを一身に集めていたのだから。これくらいなんともない。  そう思考を切り替えると、学園生活がいままでよりも楽になった。輝から逃げ回らなくていいのだからそれもそのはずだ。 「このカフェはフレンチトーストが美味しいんだよ」  メニュー表を見つめながら輝が教えてくれる。蓮斗は素直にフレンチトーストを注文することにした。頭を使ったあとは甘いものに限る。輝と都城もそれぞれ注文を終えて、メニュー表を閉じた。  腹と背が付きそうだと思えるくらいにお腹が減ってた蓮斗。けれど、隣に輝が座っているせいか、食欲は頭の片隅に追いやられてしまっている。一人で何度も、あの日のキスの続きを妄想しては、高鳴る心音に悩まされていた。だからこそ、その相手が近くにいる状況にたまらなく照れてしまう。 「顔赤いけどどうした?」  蓮斗の目の前に腰掛けていた都城が、異変に気がついて声をかけてくれる。熱を確かめるために伸ばされた手が、おでこへと沿わされそうになったとき、横から輝の手が伸びてきて先に蓮斗のおでこへと到達した。行き場を失った都城の手はその場を彷徨った末に、元の位置へと戻っていく。  おでこに手が添えられた衝撃で微かに目を閉じていた蓮斗が、ゆっくりと瞬きを繰り返した。熱などないことはわかっているのに、輝の手を拒否できない。もしもこの手が都城のものだったならば、すぐに引き剥がし、大丈夫だと伝えただろう。 「熱はなさそうだね」  本気で心配していたのか、安心した様子で呟いた輝を蓮斗のアーモンドアイが睨む。 (誰のせいでこうなってると思っているんだ!バ会長!)  輝は揶揄っているのかわからない言動をするから困る。キスのことを気にしているのが自分だけだと思うと、蓮斗は少しだけ苛立ってしまう。 「熱なんてないから離してよねっ」  手を退けるように顔を左右に振る。熱がないことを確認して満足したのか、輝はあっさりとおでこから手を離してくれた。

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