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宿敵との再会②

窓に隔たれ、距離もある。だから蓮斗の声が届くはずはない。それでも、一縷の望みをかけるかのように発した言葉。その声に反応するように、輝が蓮斗の方へと顔を向ける。たった一瞬。交わった視線に、蓮斗は強く感動した。嬉しいのだろうか。それとも幸福感というものなのだろうか。アリステラだった頃の切なさややるせなさが、それらと混じり合い、蓮斗の心が激しく揺れていた。その勢いのままその場を駆け出す。収集のつかない気持ちから逃げ出したかったからだ。  きっと輝は蓮斗の存在に気がついただろう。それが今は少しだけ怖い。  気づいてほしい、見てほしい。願ったのは蓮斗自身のはずだ。けれど、実際に叶ってしまうと戸惑ってしまう。なぜならそれは、アリステラが何度願っても叶えられなかったことだから。 「はぁ……っ、はぁ」  教室まで全力疾走すると、息を整えながら席についた。クラスメイトが何事かというかのように蓮斗へと視線を向けてくるけれど、いまはまったく気にならない。 (なんなんだよっ!もーー!!)  まさか本当に輝が視線を向けてくれるとは思っていたなかった。だから、本当に、心の底から、幸せだと……好きになってしまったのだと、蓮斗は感じてしまった。  自覚させられた気持ちの収集がつかない。逃げ出したことを輝は変に思っていないだろうか。 (あああ!なんで僕がこんなことで悩まないといけないんだ!)  、などと強がってみてもはっきりと自覚してしまえば避けることはできない。蓮斗の脳内はとにかく激しく荒れていた。  机に突っ伏して髪を掻き乱す。そんな蓮斗の姿をクラスメイトが、恐ろしいものでも見るような目で見つめている。 「ちょっと、うるさいんだけど」  二つ隣の席の狭山が悪態をついてくる。その姿はクラスメイトからすれば、勇者そのものだ。声に反応して顔を上げた蓮斗が、席から立ち上がり狭山の前へと向かう。そうしておもむろに狭山の腕を掴んで自身の頬へとあてがった。 「殴って」 「は?」  今の自分は正気ではない。蓮斗はそう考え、殴ってほしかったのだ。狭山なら手加減なくやってくれそうだという確信もあってのこと。  とにかく頭の中を整理したかった。けれど、頭の中がごちゃごちゃ過ぎて気持ちをまとめることすらままならない。一度頭を冷やせば、考えもまとまる気がした。だからこその先程の発言。だったのだが、腕を掴まれている狭山本人もクラスメイトも、蓮斗の発言に固まってしまっている。 「……そういう趣味だったわけ?」  恐る恐るというように狭山が尋ねてくる。その言葉で蓮斗は、自分がとんでもない発言をしたことに気がついた。だが、すでに引くわけにはいかない。 「っ、い、いいから殴れってばー!!!」 「わー!!やめろ!変態!!」  蓮斗の突拍子もない行動に狭山は半泣きだ。蓮斗も必死だ。教室内に二人の叫び声が響く。 その声は、教師が教室内に入ってきたことでようやく収まった。

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