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第6話
朝日と共に客を見送るために手を振ると関節がぎしぎしと鳴った。初めて見たときは大人しそうだと思ったのにかなり乱暴な奴だった。
解されないまま挿入されたので肛門が切れ、首を絞められたり鞭で打たれたりと暴力を振るわれた。
そういう癖を持った輩が来る場所なので事前に慣らしておく必要があったのにウォルフが来てできなかったから仕方がない。
確か軟膏が残りわずかだ。そろそろジープが来るころだし頼んでおこう。
避妊薬を飲み、あまりの苦みに顔をしかめる。
もう数え切れないくらい飲んでいるというのになかなか慣れない。
気怠げな身体を引きずりながらリビングへ行くと昨晩の食器が洗われていた。床はびしょびしょに濡れているし、皿を見るとまだシチューの残りカスがついている。キレイな状態ではないが、ウォルフが苦戦しながら洗った痕跡に痛みを忘れて笑みがこぼれた。
片手で思うようにできないはずなのに四苦八苦しながら洗ったのだろう。まったく律儀な男だ。
「朝が早いな」
低い声に肩が跳ねた。起きたばかりなのかウォルフの声が掠れて色っぽくお腹がずんと重くなる。さ
っきまで交わっていたせいで敏感になっているのだ。
「そういうおまえも早いじゃないか」
「早起きが習慣になっているんだ」
朝日がようやく顔を出し、リビングに差し込んでくる。橙色の光がウォルフの横顔を照らし、彫りの深い顔に陰影をつくる。
その影のつき方が彫刻のようだ。鼻の高さや顎の形が扇情的に映り、感情が高ぶる。
描きたい衝動にかられ右腕を動かそうとしたが、うんともすんとも言わない。
「どうかしたか?」
「なんでもない。それより朝ご飯にしようか」
まだ昨夜のシチューが残っていたはず。
暖炉にかけたままの鍋を覗こうと前屈みになるとずきりと下半身に痛みが走る。そういえば薬を取りに来たのだと忘れていた。
「まだ腹減ってないよな?」
「そうだな」
ウォルフは一言区切るとすんと鼻を鳴らしてあたりを伺った。段々と表情が曇り、鍵が閉まった扉とラビを交互に見た。
「おまえ……いや、なんでもない」
なにかを言いかけてウォルフは口を閉ざした。
もしかして精液の匂いで気づいてしまったのだろうか。こんなに早く起きるとは思っていなかったので風呂には入れず、身体を拭いただけだ。
まずいなと考えているとウォルフはうんと背伸びを一つする。
「散歩に行ってくる」
そう言い残すとウォルフは玄関へ向かい、さっさと外に行ってしまった。まだ傷だって治っていないのに気を使われたかも。
でもいないなら好都合だ。
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