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第12話
微睡んでいた意識が浮上し目を開けると自室に太陽の光が溢れている。もうだいぶ日が高いようだ。
起き上がろうとすると全身が痛い。
昨晩の相手は過去一最悪だった。
尻が痛いことを最初に伝えたら、相手は目を輝かせて犯してきた。
痛めつけるのが好きだけど貴族だからずっと我慢していた、と鼻息荒く話していた。ねずみの牙は自分の柔らかい肌を傷つけるのは簡単だった。
何度もなかに出されたのでどろりとした精液が垂れている。早く薬を飲まないと。
痛みで意識が朦朧とするがベッドサイドの引き出しから薬を探して飲み込み、苦みが喉を通り過ぎてほっとした。
「ラビ? どうかしたのか?」
扉の外からウォルフの声がする。もしかして声が聞こえたのだろうか。いや、ここは防音だから大丈夫だと早鐘を打ち始めた胸を押さえる。
部屋にはもう客はいなくなっていた。意識を失っている間に帰ったのだろう。客がいないことに安堵したが、傷だらけの身体をウォルフに見せるわけにはいかない。痛む身体に鞭打って新しい服に着替える。
「大丈夫だ。今日は少し調子が悪いから寝ているよ」
「わかった。ゆっくりしていろ」
そう答えるとウォルフの気配がなくなり、ほっと息を吐いた。
だが最悪なことに傷薬や包帯はリビングの救急箱に入っている。ウォルフも使っているので持ち出したら気づかれてしまう。
「とりあえず布で拭くか」
このままにしたら膿んで化膿してしまう。肩や首の傷口に布を当てるとどんどん血を吸いこんで赤くなっていく。
それが終わると中に残ったままの精液を掻き出した。血と精液が混ざった塊が出てくる。あまりの痛さに唇を噛んだ。
本当は風呂に入りたいところだが、一度リビングを通らないといけない。裏口から回って行けなくもないが、ウォルフと鉢合わせする可能性もある。
傷が治っていないところでまた使われたので中はずたぼろだった。どんな悲惨な状況か見たくもない。
痛みにまた涙が出てきた。こんなに泣いたのは絵が描けなくなった日以来だ。
なんて惨めなのだろう。男に凌辱され、痛めつけられ、自分の身体なのにまるでごみのように扱われる。
けれど痛みがあるから生を実感できる。あの日の屈辱を上書きできる。
泣きながら傷の手当てをして、青臭さと血の匂いが残るシーツで再び眠りについた。
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