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第18話

 ジープが食料品を持ってやって来る日がきた。  今回はウォルフもいることもあり、衣料品などの日用品も多く頼んだので荷車が二台ある。  その積み荷を運んでもらっている間、リビングでジープとお茶をした。ウォルフは積み荷運びを手伝っている。  「あいつとはどうだ?」  「どうって?」  「もうヤったんだろ?」  飲みかけていた紅茶を噴き出した。なんて下世話な質問なのだろう。じろりと睨みつけるがジープは大きい目をまっすぐに向けているのでこちらが先に反らした。  「ヤるわけないだろ。金が貰えるわけでもないし」  「なんだてっきり好みの男なのかと」  「んなわけない」  「雑食だからって安心するなよ。あいつはなにを考えているかわからん」  「……わかってるよ」  「なら早く追い出せよ。傷は治ったんだろ?」  「そうだけど」  ウォルフの左手は治ったが、出ていく素振りをみせない。  しばらく置いて欲しいと言っていたし、行く宛がないのだろうか。  ラビ自身もまた一人に戻るのは寂しくていつ帰るのか訊かずにいる。そうすればずっといてくれるのではないかと自分勝手なことを考えていた。  「そういえば街で妙な噂を耳にしたんだ」  「妙な噂?」  ジープは神妙に頷いた。  「騎士団長が殺されたらしい」  騎士団長は国で一番強い狼だと聞いたことがある。大木のように大きな腕で振り回した剣で十人以上なぎ倒せるという腕力の持ち主らしい。隣国では 敵なしだと言われるほど強いとの評判だった。  「すごく強い奴なんだろ? そんな奴が殺されるのか?」  「まぁ死体は出てないらしいけど、現場で血の量がかなり多かったらしい。生きてたとしても風前の灯だろ」  「ふーん」  「なんだ、あまり興味なさそうだな」  「別に。俺は街から遠いところに住んでいるから騎士団とは関係ないし」  「それもそうだな」  ジープは紅茶を啜り、持参したケーキを一口食べる。  「でもこれで僕たちの仕事はやりやすいな。騎士団は団長が死んでてんやわんわしてるから水商売を摘発する余裕もない」  「……まさかおまえがなにかやったのか?」  ジープは黙って再びフォークでケーキを切って口に運んだ。その無言が肯定とも取れ、肌が粟立つ。  ケーキを食べ終えたジープは立ち上がり、ハンカチで丁寧に口元を拭った。  「肉食動物には気をつけろよ」  「どうしてそこまで嫌う?」  「あいつらは僕たちを狙うことしか考えてない」  「なにかされたことがあるのか?」  瞬間、ジープの顔が真っ赤になった。眦を釣りあげて、肉食動物も慄きそうな鋭い眼光にひっと小さな悲鳴を漏れた。  この話は触れてはいけないのだと気づき、喉を引きつらせながら「悪い」と返した。

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