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第36話

 ジープは捕まった。  雇った肉食動物たちに草食動物を襲わせて怪我をさせ、普通の仕事ができないと吹き込み水商売をさせていたらしい。また水商売に向かない者は破格の賃金で下働きをさせ、その家族を人質にとっていたらしい。  そのほとんどがうさぎやリスなどの小動物の遺伝子を持つ男で、違法と知っていて買っていた貴族や金持ちもお縄についた。  突然ヒートを起こしたのも他国から違法薬物を仕入れて、それを酒に混ぜていたらしい。  他にも麻薬の密売や腐った食品を高値で売りつけて儲けたり、窃盗やゆすりなどありとあらゆる悪に手を染めていたらしくまったく救いようがない。  「なんでそこまでして金が欲しいんだろう」  「肉食動物に対して酷くコンプレックスを持っていたみたいで、金で自分が優位だと示したかったらしい」  「ジープらしいな」  確かにそういう男だった。騙されて傷つけられたことは許せないが、それなりに四年間交流があったので心の底から憎んでいるわけではなく複雑な想いがある。  「好きだったのか?」  ベッドに腰かけていると青みがかったグレーの瞳が鋭く細められる。まさかと言い返そうとしたのに壁際に追い詰められ、唾と一緒に飲み込んだ。  諸々の手続きが終わったのは日付を跨いだ後だった。実家に帰るつもりだったが無理やり連れて来させた先はウォルフの別宅。団長ともなれば寮以外に家を持つことが出来るらしい。  のんびりお茶をするわけではないことはわかっている。  部屋に入ったときから熱っぽい視線を向けられてどうしたらいいのかわからない。でもきちんと向き合いたい。覚悟を決めて乾いた唇を舐めた。  「ウォルフが好きだ」  言葉にすると全身が熱くなり、チョコレートのように溶けてしまいそうだ。  「やっとこっちを向いてくれたな」  「そ、そうか?」  「ここに来てからずっと目が合わなかった」  「だって、それは」  「恥ずかしい?」  小さく頷くとウォルフに抱き締められた。ほっとする温かさ。肩口に額を擦り寄せて、遠慮がちに背中に腕を回す。  「オレもだ」  「そうは見えないけど」  「表情に出づらいだけだ。初めて会ったときも嬉しかったんだ」  「どこが。目覚ましたと思ったら「大丈夫か?」だもんな。おまえだろ、それって」  「そうだな」  傷だらけなのに誰かを気遣っていた。ウォルフは最初からとてもやさしい。

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