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第37話
そのやさしさに包まれると自分がどうしようもなくちっぽけな人間に思える。肉食動物を怖がり、レイプされてからは痛みを求めた。
いま振り返ればなんて莫迦なことをと思えるがあのときはそれが最善だと思い込んで自分を守るしかなかった。
「ウォルフと出会えてよかった」
「オレもだ」
顔が近づいてきて、ぎゅっと目を瞑る。柔らかな感触が唇に触れられ、角度を変えながらどんどん深くなっていく。
押し倒されてウォルフの首に腕を回す。舌を絡ませながらお互いの身体に触れて存在を確かめた。
俺の好きはここにあるのだと。
セックスは痛いだけのものだった。相手に無理やり身体を開かれ、自分の意思など関係なく好き勝手にされる。でもウォルフとしてセックスは愛を伝える行為だと知った。
触れる唇や手が言葉よりも明確に気持ちを伝えてくれる。泣きたくなるような幸福感は気持ちを高ぶらせ、それに応えたいと身体が必死に訴えかけてくる。
後孔を舐められ散々慣らされたのにウォルフは次に進まない。こちらが泣いて懇願するとやっと性器をあてがった。
「痛かったら言えよ」
「そういうのいいから早く」
足を絡ませるとやっと挿入ってきた質量に眉を寄せた。でもここを通り過ぎれば気持ちよくなることを知っている身体は力を抜いて受け入れる。
一番太いカリが弱い部分を押され、鼻にかかる甘ったるい声が漏れた。
「あっ、んぁ、そこ……だめ」
「痛いか?」
抜こうとするので慌ててウォルフの背中に腕を回す。
「ちがっ」
「だめだと言ったじゃないか」
「だからそれは……言わせる気か!」
「なにがだ?」
「……察しろよ」
「ラビが嫌なことはしたくないんだ。教えてくれ」
こいつは天然の莫迦だ。セックスのときの嫌は嫌じゃないということを知らないらしい。
でもそれだけ自分を大切にしたいと思ってくれていると知り、結合部分がきゅんと締まる。
きつく締めあげたせいでウォルフの眉間に皺が寄る。
「気持ちいいからこのまま……あっ」
ぐっと腰を進められ最奥を突かれる。中を擦られると腰が浮いてしまい、ウォルフに掴まれて律動が深くなる。
何度か繰り返すとあっという間に射精した。
奥まった箇所に熱いものが注がれ、その感覚にすら甘ったるい声が漏れる。
「まだしていいか?」
「ウォルフに触られるの気持ちいい」
「オレもだよ」
抱きかかえられ今度はウォルフに跨る体勢にさせられた。自分の体重がかかる分、より深く交わり縋るようにウォルフの背中に腕を回す。
「片手だとなんか寂しいな」
右手はまだ指先しか動かせない。医者の見立てでは筋肉が衰えており、動かす練習をした方がいいとのことだった。
だらりと垂れた右手を持ってウォルフが口づける。
「オレがその分抱きしめる」
がっしりとした体躯のウォルフのなかに小さな自分はすっぽりおさまる。パズルのピースのように過不足なく当てはまり、空いた心までも埋めてくれた。
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