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第18話 3章 手術

「ピーマンも食べないとだめだぞ」  添えられたピーマンを残しているのを、見咎められる。尚希は、尚久の顔を見る。昼食の時は、ピーマンだけ残ったのを、花山から指摘されたが、無理に食べろとは言われなかった。だから、残した。でもこれは、食べないとだめかな……。 「全部食べないとバランスが悪い。食べちまえばこっちのものだ。ちゃんと栄養になってくれる。勢いが大事だ。思い切って口に入れろ。その後、ゼリー食べたら口直しできる」  尚久が、どこか飄々とした口調で言う。尚希は、言われた通り、思い切って口に入れる。そして、早々と飲みこんだ。 「ほーら食べられた、えらいぞーっ」  そう言いながら、尚希の頭を撫でる。なんか、凄い子供扱いされているように思う。三歳の甥っ子と同じ扱いなのでは……褒められるのは嬉しいけど……。 「なんか、僕、凄い子供扱いされているような……」 「だって君は子供だろう。十五歳の高校生なんて子供だ」  そうだけど、確かにそうだけど、三歳の子と同じ扱いは違うような……。尚希は、その後ゼリーを食べた。ゼリーの甘さが、舌に残っていたピーマンの苦味を消してくれた。 「よしっ! 完食だな!」  また尚希の頭を撫でる。三歳の子と同じ扱いでも嫌じゃない。尚久の手の温もりを頭に感じるのは嬉しい。  尚希は歯を磨いた後、ベッドへ横になる。側には尚久がいる。 「先生、帰らなくていいんですか?」 「まだ大丈夫だよ。子供はそんな心配するな」  そう言う尚久は、とても優しくて尚希は頷いた。子供扱いでも嬉しい。このまま側にいて欲しい。 「そうだ、尚希君。退院したら一度うちへ遊びに来ないか?」 「えっ、そんな……僕なんか行ったら迷惑じゃ……」 「僕なんかって、そんな言い方するな。迷惑なら誘わないよ」 「それに、先生は良くても、蒼先生とかも……」 「あの優しい人がそんなこと思わないよ。まあ君が、小さい子が苦手ならだめだけどね」 「苦手って……周りに小さい子いないから分からない」 「じゃあ、一度おいで。はるは可愛いから。なんせ、病院では威厳ある院長がメロメロだからな」  へーっそうなんだ。院長先生直接見たことないけど、写真では見たことある。威厳があって立派な方だと思った。あっ! ということは、その院長先生もいるの?! ちょっと緊張するかも。 「院長がいるからって、緊張することはないよ。家では普通のじいさんだから」  その言い方が可笑しくて、尚希はクスッと笑った。そして行ってみたいかもと思う。  その後、尚久はもう一人結惟という妹がいることなど、北畠家の様子を尚希に聞かせる。聞きながら、尚希は益々行ってみたい気持ちが強まる。そして、段々と眠くなってくる。  眠くなってきて、尚希は無意識に、尚久の腕を握る。尚希は驚いたが、無意識なんだと分かると、それが可愛く思う。そのまま、尚希が完全に眠るのを見守る。  尚久に見守られながら尚希は、すやすやと眠っていく。 「ふっ、眠ったな。あどけない顔だ。まだ子供だよ」  尚久は、眠っている尚希の頭を撫でてから病室を静かに出た。

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