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02-2.
酸素が足りないのか。
頭の中が真っ白になっていく。考えがまとまらず、ただ、与えられている快感に応えるように舌を絡めることしかできなかった。
互いに求めるように貪り合うだけの口付けにさえも、興奮を隠せない。
どのくらい口付けをしていただろうか。
不意に離された。激しく絡み合っていたのを物語るかのように、零れた唾液をアルバートの指で拭われる。
「満足するまで付き合ってくれるんだろう?」
僅かに唇に触れた指先にさえも愛おしいと言わんばかりの蕩けた顔をするブラッドに対し、アルバートは笑みを零した。
「それにしても、随分と余裕がないな?」
アルバートの言葉に対し、ブラッドは首を傾げた。
……余裕?
口内を翻弄するような口付けの快感を忘れられない。
それを求めるかのように無意識にアルバートの背中に腕を回していたことに気付き、ブラッドはゆっくりと腕を降ろした。
「ばーか。余裕ないのはお前だろ」
減らず口を叩く。
煽るような言葉を口にすれば、言葉を封じるかのように甘く激しい口付けをするだろうと期待に満ちた顔をしていた。
「自覚がないのか」
「は?」
「ずいぶんと激しい主張をしているが?」
アルバートの右手はブラッドの下腹部を撫ぜる。
それから迷うことなく股間に触れた。
「ひゃっ」
ズボンの上から触れられただけだというのにもかかわらず、反射的に声がでる。ブラッドは信じられないと言わんばかりに自分自身の口を手で塞いだ。
……うっ、嘘、だろ。
頭の中が真っ白になるほどに気持ちのいい口付けだった。
それに応えることに没頭しており、下半身が熱を持っていることに気付かなかった。指摘をするかのようにゆっくりと撫ぜられるたびに大きさが増していることを自覚し、ブラッドの顔は真っ赤に染まる。
「苦しそうだな」
そう言いながらも、アルバートの手は止まらない。
「気持ちよくしてやろうか」
アルバートの提案に対し、ブラッドは反射的に目を反らした。
……どうすればいいんだ!?
どのように反応をすればいいのかさえも、わからない。
困惑を隠せないブラッドの返事を待たず、アルバートは刺激を少しずつ強くする。ズボンの上から形を確認するかのように撫ぜまわしたかと思えば、上下に擦り上げるように刺激をする。
刺激に慣れさせないかのように動かされる手に翻弄され、本能のままに大きくなる快感に抗えない。
「同意を得られないまま、犯すようなことはしない」
アルバートはブラッドの耳元で囁いた。
覆い被さるような姿勢のまま、アルバートはブラッドの耳元に軽い口付けをする。それさえも、ブラッドの理性を揺らがせているとわかっているのだろう。
「触れるだけで満足しているのはブラッドなんじゃないか?」
アルバートの言葉に対し、ブラッドは頭を左右に振った。
「ばか、に、すんなっ」
口元を抑えながらも声をあげる。
声が震えてしまう。
ブラッドが反論をしようとしている間も、アルバートの手は止まらない。
「気持ちよくにゃんかっ!?」
ズボンの上から爪立てられた。
爪で引っ掻くような刺激に声が裏返る。布越しで擦られ続けた陰茎は熱を持ち、さらに刺激を求めるかのように敏感になっている。
「ひぐっ」
喘ぎ声をあげそうになる。
それを必死に抑え込もうとするブラッドの姿はアルバートの性欲を煽るだけだった。
「可愛いな」
アルバートは弱いところ探すかのように手を動かしながら、ブラッドの耳元で話し続ける。
「可愛い。ブラッド。可愛いよ」
可愛いと言われる度に頬が赤くなる。
それに気づいているのだろうか。
アルバートの言葉に対し、ブラッドは喘ぎ声を抑え込みながら睨みつける。
「一緒に気持ちよくなりたい。触れるだけなんてひどすぎると思わないか?」
アルバートの言葉に対し、ブラッドは小さく頷いた。
頷かなければ服の上から愛着をされ続けると判断したのか。
与えられる僅かな快楽に我慢が出来なくなったのか。
必死に抵抗をしようとするかのように何度も頷いてみせたブラッドに対し、アルバートはゆっくりとズボンを降ろしていく。
「下着が濡れているな」
「うるっしゃい!」
「舌も回ってないじゃないか。そんなに気持ち良かったか?」
その言葉に対し、ブラッドは自身の口元を隠していた手を退け、アルバートから逃げようとするかのように身体を動かした。
「うるさい! ばか! 見るな! 触るな! 変態!!」
押し倒された姿勢から逃げられなかった。
それを隠すかのように声を上げて見るものの、アルバートは動じない。
「変態?」
先走りで濡れている下着の上から指で撫ぜる。
その僅かな刺激にさえも反応しているブラッドに対し、アルバートは口角を上げる。
「変態はブラッドだろう? 触られただけで濡らしているじゃないか」
「それはお前が触るから!!」
「俺に触られるだけでこうなるのか。男に興味がないんじゃないのか?」
「それはっ!」
言い逃れは出来ない。
覚悟を決めたのか。
それとも、その間も与えられる快感に理性が呑み込まれたのか。
「すっ、好きな奴とキスしたらこうなっても仕方がないだろ!!」
ブラッドは顔を真っ赤にしながら本音を吐き出した。
「それに二週間も抜いてないから溜まってるんだよっ!」
泣き出しそうな勢いだった。
「なんとか言えよ! アルバートの変態野郎!」
ブラッドの本音が想定外だったのだろうか。
アルバートは目を見開いたまま、動きが止まっていた。
「……好き?」
アルバートは信じられないと言わんばかりの声をあげる。
「あぁ! そうだよ! 好きだよ! 大好きだよ! これで満足か!!」
ブラッドは自暴自棄になったかのような声をあげる。
隠し続けていた数年分の恋心を抑えきれない。どうしようもない想いを打ち明けるかのようなブラッドの言葉にアルバートの顔は真っ赤に染まる。
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