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02-2.
「顔色はいいな」
アルバートは満足したかのように手を離す。
「食欲は?」
「あるわけねえだろ。この状況で腹なんか減らねえよ」
「それもそうか」
納得したのだろうか。
アルバートは姿勢を直し、少々考え込む。
……なに考えてやがる。
この状況を理解しているのだろうか。
不意に問いかけたくなった言葉を飲み込む。なにかと言い争いになる相手ではあるが、アルバートの頭が悪くないことはブラッドもよく知っている。
……父上たちに提案したのはアルバートだな。
学生時代は常に首位争いを繰り広げている間柄だった。
身分差を考え、距離をとろうとするブラッドに対し、アルバートはなにかと挑発を続けてきた。
なにかとブラッドの視界にアルバートがいるように仕向け、興味を抱かせ続けさせるような男である。
それを知っていながらも、ブラッドは逃げられなかった。
……俺以外の相手なんて山のようにいるくせに。
執着をされているということは自覚している。
それを素直に喜べないのは自尊心が邪魔をするからだ。
「ブラッド」
アルバートはブラッドを仰向けにさせる。
両腕の自由を奪われている状態のまま、向きを変えられたブラッドは不服そうな顔をしているが、アルバートは気にもしていないようだ。
「告白の返事を聞きたい」
それは何度も言われている言葉だった。
ブラッドの上に跨り、逃がすつもりは微塵もないのだろう。
「何度も言ってるだろ。俺は男に興味はねえの! 他に当たれよ」
それでも、ブラッドは冷たくあしらった。
「あぁ。せっかくだ。伯爵家を救ってくれたお礼に一発ヤってやろうか?」
煽るように笑ってみせた。
それに対してアルバートは表情一つ変わらない。煽られても怒ることもせず、真っすぐな目でブラッドを見下ろしている。
……イケメンなのは狡いだろ。
同性を性的対象として見れないというのは嘘だった。
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