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02-3.

 ……良い顔をしやがって。  一目惚れだった。  数年前、学院の入学式で知り合ってから淡い恋心を抱いていた。  ……俺だって好きだって言いたいけど。いまさら、言えるかよ。  その恋心を必死になって隠し続けてきたのだ。  急に素直になれるわけがなかった。 「……そうか」  アルバートは引かなかった。 「告白の返事はいつでも構わない。ブラッドが言いたくなったら言えばいい」  振られるという考えはないのだろう。  アルバートはブラッドの両腕を拘束していた縄を外す。それでも、ブラッドの上から退こうとしない為、ブラッドが自由になることはなかった。 「愛している」  アルバートはゆっくりと顔を近づける。  それに対し、ブラッドは抵抗をするように目を閉じた。  ……直視できないような顔をしやがって!!  自由になった腕で押し返そうとするものの、上手く、力が入らない。 「愛しているんだ。ブラッド」  迷うことなく重ねられた唇を拒めなかった。  触れるだけの口付けだ。宝物に触れるかのように優しい口付けに対し、ブラッドはため息を零しそうになる。  ……子どもかよ。  何回も触れては離れるだけの口付けに対し、ブラッドは薄っすらと目を開けた。  視界に入るのはアルバートの青色の眼だった。  瞳の中に移りこんでいるのは可愛げのない自分自身の顔だ。 「自信がねえなら、俺からしてやろうか?」  ブラッドは両腕をアルバートの首に回す。 「子どもじゃねえんだ。触れるだけで満足かよ」  煽るように舌を出して見せれば、アルバートの表情が変わった。  その変化を指摘する間もなく、唇が重なり合う。  口内を掻き回すかのような激しいものだ。  それに応えるようにブラッドも舌を絡める。唾液を混ぜるかのように激しく絡み合う口付けはすぐには終わらず、互いの息が乱れていることも気づいていないかのようだった。  ブラッドの口角から唾液が零れ落ちる。

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