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二十五 イチャイチャお風呂タイム(好き)
「んっ……、カノくん、くすぐったい」
首筋にキスされ、清は身を捩る。浴槽のお湯がたぷんと揺らいで、溢れて流れていった。
「好きだろ?」
「好きっ、だけど……」
後ろから抱き締めるようにされ、風呂の中でイチャついていると、ムズムズした気持ちになる。カノがいつもより、甘く優しく想える。こんな風に甘やかされるのは、落ち着かない。
「清、眠くない?」
「あー、目、冴えちゃった……」
夜じゅう抱き合ったおかげで、恐らくはもう、明け方近い。結局、カノは嫌がる清の腹の中に五回も出したし、恥ずかしがる様子を楽しみながら、ぐったりする清の尻の穴から精液を掻き出した。お蔭で不快感はなくなったが、散々使われた穴はしばらく開きっぱなしだったし、今も何だか入ったままのような感じがして、落ち着かない。
カノのセックスは激しく、ついでにいうと少ししつこい。体力目一杯までヤられると、清は自力で立てなくなる。以前の清は、女の子を見れば「彼女欲しい」「エッチしたい」と、性欲に対して旺盛な方だったと自覚しているが、カノに抱かれるようになって、自分は淡白なのかも知れないと思い直した。カノが絶倫なだけだろうが。
とにかく、清が満足する以上に、たっぷりと愛さたのは事実だ。疲労感は酷いが、充足感は心地良い。その上、恋人のように甘やかしてくれる。
「カノくん、絶倫過ぎない?」
「清だって、ついてきてるだろ」
「それは、カノくんが無理矢理……」
抗議しようと振り返ると、カノの穏やかな笑みがあった。その顔を見れば、文句など言えなくなる。
「無理矢理?」
「むっ、無理矢理ってほどじゃないけど……。でも、多すぎだって!」
「だって、週末しか逢えないし。清を見てると治まんないんだもん」
「っ」
可愛いことを言われ、唇を結ぶ。カノも逢いたいと想ってくれているんだろうか。そうなら、嬉しい。
(いや、ヤりたいだけかも)
舞い上がる気持ちをグッと堪え、そう考える。
(まあ、でも。実際、カノくんは不自由してないよな。俺と違って)
カノはモテる。その気になれば『ブラックバード』の客全員と付き合えそうだし、歩いているだけでも女の子がついてきそうだ。なにも、男で、柔らかくもなく、ついでにブサイクな自分と寝なくても良いわけだが。
(……おっ、俺相手に、チンコ苛つくとか言ってたし……)
なぜか、カノは清に欲情するらしい。嬉しいような、落ち着かないような気持ちになる。
(なんでカノくん、俺なんかに……。カノくんドSだから、虐めたくなるんだろうか……)
だとすると、清は『ちょうど良い』のかもしれない。女の子より丈夫で、多少、手荒にしても問題なさそうだ。中出しも、男だから妊娠の心肺もない。
(そうか。都合が良いのか)
都合が良く、ちょうど良い。
その理由が、一番しっくり来る気がした。しっくり来たが、モヤモヤもする。
(まあ、理由は解ったけどさ。少しくらい、丁寧に扱ってくれても――)
清は元々、ちゃらんぽらんで不真面目な気質のせいで、友人からの扱いも雑だし、軽い。だから今さらカノにそういう扱いをされても、そこまで気にならなかった。ただ、少しだけ優しくして欲しいと思う。
「ん? どうした?」
そういいながら、カノが清の髪を撫でた。腕を動かすのも億劫だった清の髪は、カノが丁寧に洗ってくれたお蔭で、水気を吸ってペッタリとしている。恐らくは、このあと乾かしてもくれるだろう。
「あ、うん……」
(良く考えたら、エッチの最中以外、すごく優しいかもしれない……)
ジワリ、頬が熱くなる。蕩けそうなカノの笑みに、絆されてしまう。これ以上、好きになったら駄目なのに。
好きになっても、どうしようもないのに。
「あ? なんだよ。どこか痛いの?」
「っ……」
カノの指が、頬に触れる。
「カノくん……」
腕を伸ばし、キスをねだる。カノは何か聴きたそうだったが、そのまま清の腰を引き寄せ、キスをした。
「は――……、ん……。カノ、くん……、好き……」
しがみつきながら、うわ言のように囁く。カノは嬉しそうに頬を緩めて、唇を何度も重ねる。
「勃起しそう」
「もうムリ」
清の首筋に顔を埋めてそういうカノに、清は顔をしかめた。
「いいよ。仕方ない。また来週、来てよ」
「う――うん」
誘いの言葉に、頬を染めながら頷く。それは、セックス込みということだろうか。それとも、単純に店に来いということだろうか。
二人は恋人ではない。ホストと客の関係でしかない。ホストが誘うなら、店に。だと思うのに。
(なんか、そう聞こえないんだよな……)
自意識過剰かもしれないけれど、清にはカノが、「清を抱きたい」と言っているように、きこえてならなかった。
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