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三十六 カノの執着
吉田清という男は、ゲイではない。どちらかというと女の子が好きで、おっぱいの大きい女の子がいれば目で追ってしまうし、合コンなんかも大好きだ。なんなら地元では風俗通いもしていた、典型的なダメ男である。
「――」
清の『エッチな気分になっちゃって』という言葉に、カノは一瞬、思考を停止させた。カノに抱かれるようになって、アナルを使っての快楽を覚えたはずの清だったが、一人でそういうことをしたという話は聞いたことがなかったし、カノがバイブをプレゼントしたのも、かなり嫌がっていた。
その清から、匂いだけでエッチな気分になったと言われてしまえば。
ゴクリ、喉を鳴らす。
目の前の獲物に、今すぐ食いついてしまいたい心境になる。だが、冷静さを失ってはいけない。
「へぇ、エッチな気分になって、もしかしてオレがあげたバイブ、使った?」
「っ! そんなことっ……! ちょっとしか……」
(ちょっと使ったのか)
清が一人遊びしていたのを想像し、ムラッと性欲が湧く。下半身に血液が集まるのが解る。
(マジで、今すぐ犯してやろうか)
ハァと息を吐き、落ち着かせる。
「ちょっとって? どういうこと?」
「ちょ、ちょっとはちょっとだろっ」
「清?」
良いから言えと、圧をかける。清の顔は真っ赤で、トマトのようだ。かぶりつきたくなるのを堪える。
「う、うまく、挿入らなくて……。って、もう良いだろっ!」
「ああ、そういうこと」
どうやら、うまくやれなかったらしい。指さえ入れたことがないのだろうし、仕方がないとは思う。
「じゃあ、満足してないんだ?」
欲望を滲ませた声音で囁くと、清はビクリと肩を震わせる。
「――て、ない」
ぽそっと、消えそうなくらい小さな声で呟くのに、カノは笑って清の肩を抱いた。
「じゃあ、早くホテル行こうか?」
「っ、ん……」
小さく頷く清に、カノは満足して微笑んだ。
◆ ◆ ◆
一緒にシャワー使おう。と誘うと、清は恥ずかしそうにしながら着いてきた。こういう誘いを、清は断ったことがない。最初は嫌がっても、「オレがしたいんだけど、嫌?」とか言えば、コロッと着いてくる。
「あ♥ カノく……♥」
舌を伸ばしてキスをねだる清に、カノは噛みつくようにキスをしながら、両手で尻を揉む。ビクンと跳ねる身体を抱きながら、ぐにぐにと尻を掴んでやれば、清は身体を薔薇色に染めた。
「あ、あっ……、ん、揉むな……よぉ♥」
「良いじゃん。オレが揉みたいんだし」
細身のクセに弾力のある尻を楽しみながら、ちゅ、ちゅ、とキスを繰り返す。清の尻はやはり小さいが、感度も良いし、滑らかだ。
「んぁ、カノく……♥」
「舌出して。キスして、清」
「んっ♥」
素直にキスしてくる清が、可愛いと思う。同時に、こんなにチョロくて大丈夫か? とも思う。
腰つきはエロいし、乳首もアナルも敏感だ。なんなら、首筋も脇腹も脚も、感度が良い。だいたいはカノのせいだが。
(細いからゲイに好かれる感じじゃないけど、妙に色気あるときあるからな……)
男子寮で暮らしているというのを聞いたときは、少し心配してしまった。その上、清はキスマークを気にせず大浴場を使っていると知って、頭を抱えてしまった。
(まあ、痕つけんのやめないわけだが)
首筋にちゅうっとキスを残し、乳首に吸い付く。シャワーが髪を濡らしたが、気にせず乳輪に舌を這わせる。
「あぅ♥ 乳首っ……」
「好きだろ? こうされんの」
尖端を軽く噛んで、ちゅうっと吸い上げる。ビクビク震える身体は、嘘が吐けない。清はカノの髪を掴んで、快感に耐えようとする。
「ぁん……♥ う、んっ……♥」
「赤く熟れて、可愛いよ」
「カノ、く……のせい、だからねっ……」
「なにが」
ちゅう♥ 吸い上げると、ツンと突き立つ。もっと触ってと、ヒクヒクと震えているようだ。
「敏感、なっちゃって……、最近、服で、擦れて……」
「――」
それは、仕事中に擦れて感じてしまうということだろうか。
(エロいな?)
堪らなくエロい。自分がその場に居たら、背後からガンガンと突き上げ、犯してしまう自信がある。
見られないのが残念だ。同時に、心配になってくる。
「他の男の前で、こんな顔してんのか? 清」
「ぁ、う♥ して、にゃい……、カノくん、だけ……っん♥」
きゅっと乳首を摘まみながらそう聞くと、清は首を振る。だが、信用出来ない。
「嘘吐け。服で擦れるって言っただろ」
「あっ♥ そう、だけどっ……、バレて、ないからっ……♥」
「清がエロい身体してるって、バレたらどうすんだよ? 男子寮なんだろ?」
清が男たちに囲まれて、いやらしいことをされる妄想が頭を過る。
「あ、あっ♥ つねんないでっ♥ 考え、過ぎっ……♥」
「そうかもだけど」
カノは嫉妬深い。独占欲も強い。誰かに触れさせるとか、考えられない。
「清」
「んあ?」
「お前はオレのもんなんだから、誰かに触らせるなよ」
「――ひゃい♥」
蕩けた顔で返事をする清に、カノは(本当に解ってるのか?)と首をかしげた。
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