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第16話
駐車場のオープン日。
午前中は現場の立ち会いがあった。
ここ最近の眠りの浅さが原因なのか、体がふらついていた。
何とか午前中は乗り切り、これは無理だと判断して時間給を取ることにした。
家に帰ると、猫たちが一斉に玄関に駆け寄ってくる。
「ただいま――まだごはんの時間じゃないぞ」と軽く言いながら、彼らの甘えっぷりに負けてオヤツをあげる。
シャワーを浴びて、体の疲れを少しでも洗い流そうとしたが、心の中にある不安は消えない。
シャワー後、一階にいた猫たちの姿が見当たらなくなり探していると、二階から何かの音がする。
「黒岩の部屋か…」
音の出どころを探しつつ、二階へ上がると、やはり黒岩の部屋のドアが少し開いていて、そこから猫たちが顔を覗かせていた。
猫たちに導かれるように黒岩の部屋に足を踏み入れる。
猫たちは、いつものようにベッドに飛び乗り、安心しきった様子で丸くなる。
俺も、自然とそのベッドに体を横たえる。
黒岩の匂いがするベッドに身を任せると、不思議と心が落ち着き、すぐに眠りに落ちた。
夢の中、幼い頃の俺が泣いている。
周りには誰もいないと思っていたのに、突然、黒岩が現れて優しく抱きしめてくれる。
しかし、その温もりはすぐに遠ざかっていく。
「いやだ、いやだ!」
黒岩が去っていくのが見えて、必死に手を伸ばす。
「行かないで…!」
目が覚めた瞬間、俺の手はスーツ姿の黒岩の手を強く握っていた。
どうやら帰宅したばかりのようだ。
「ごめん、起こしちゃったか?」
黒岩の優しい声が響く。
心の奥底で確信する。
俺はこいつのことが好きなんだ。
「体調悪いのか?」
その問いに答えず、俺は無意識のうちに黒岩にキスをしていた。
彼は驚いた表情を見せるが、それでも優しく受け入れてくれる。
「黒瀬…」
「お、俺からはダメって言われてないから…」
照れ隠しの言い訳を口にする。
黒岩はクスッと笑いながら、親指で俺の唇に触れる。
「もう一回…」
彼の熱い吐息に誘われ、俺はもう一度唇を重ねた。
今度は黒岩が顔を近づけてくる。
唇が触れるほどの距離で、甘く囁かれる。
「おねだりしてくれないの?」
黒岩の囁きが耳元に届く。
心の奥底から込み上げてくる感情に突き動かされ、俺はとうとう言葉を口にした。
「――キスしろ」
その瞬間、黒岩は微笑んで俺に応えた。
唇が重なる。薄く開いた隙間から舌を絡め取られ、そっと甘噛みされた。
その瞬間、俺の体が熱く燃え上がるのを感じた。
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