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第17話

新しくオープンするスポーツクラブの駐車場管理を担当することになった俺は、黒岩やスポーツ施設運営会社の吉田と一緒に現場で打ち合わせをしていた。 打ち合わせが終わったのは18時過ぎで、外はすっかり暗くなっていた。 「二駅先に最近オープンしたサウナ専門店があるんですよ。行きませんか?」 吉田が提案してきた。 吉田の会社が運営する新形態のサウナ専門店らしい。 「社内でも話題になっていて、行ってみたいと思っていたんですよ」 黒岩が興味津々の様子で応じた。 どうやら、黒岩はサウナが好きらしい。 「特に個室サウナが人気で、1ヶ月先まで予約でいっぱいです」と吉田が続けた。 俺は驚いた。 そんなに人気があるとは知らなかった。 「テレビでも取り上げられたというのもありますけど、サウナ人口が増えたというのが大きいのではないですかね」 吉田は得意げに話す。 確かに、最近よく「サウナで整う」という言葉を耳にするが、俺自身はまだその「整う」という感覚を味わったことがなかった。 「黒瀬さん、ぜひうちの施設で整ってください。個室以外にもサウナと水風呂に力を入れているんです」 その言葉に少し興味が湧いたが、正直サウナ自体が得意ではなかったので、どうしたものかと考えていた。 サウナ施設に到着すると、やはり個室サウナは満室で利用できなかった。 「個室はまた今度お邪魔させていただきます」 黒岩は落ち着いた様子で言った。 俺はというと、やや緊張しつつも、その場の雰囲気に流されるままサウナへ向かうことになった。 サウナ内には、広々とした空間が広がり、3種類のサウナが設置されていた。 低温サウナ、ミストサウナ、そしてスタンダードなサウナ。 水風呂も全身がすっぽり入れるほどの深さがあり、温度も15度と6度の二種類が用意されていた。 「中でも私のオススメは、サウナ飯!濃い味がたまらんのですよ。家では塩分控えめで、嫁がうるさくて。先にやってます」 「吉田さん、サウナは?」 俺が問いかけると、 「ああ、私サウナ苦手でして、お二人でどうぞ」 吉田は言った。 「え?」 「私のことは気にせんとサウナを堪能してきてください」 吉田はスキップしそうなほど浮かれた足取りで食事処へ消えていった。 奥さん大変だと肩を竦めた。 「なんか俺たち、吉田さんにだしにされた?」 脱衣室で着替えながら黒岩に言った。 彼は笑っていた。 「そうかもな。でも、俺は一緒にこれて嬉しいよ」 黒岩は耳元で囁いた。 キスされるかと焦り、俺は思わず周りを伺ってしまった。 サウナに入ると、ちょうど自動ロウリュが始まるタイミングだった。 「あ、ロウリュ始まるよ。タイミングよかったね」 黒岩は楽しそうに目を輝かせていた。 ロウリュが終わった直後、俺は早々に根をあげた。 「俺もサウナ苦手かも」 「出ようか?」 「いや、さすがに、もう少し耐える。整うってやつ、味わってみたいし」 「無理するのはよくないよ。一旦でよう」 サウナから解放されほっと胸をなでおろす。 外気浴スペースで休憩しながら、黒岩に愚痴る。 「顔熱いし、息苦しいし。水風呂冷たいし」 「体が温まると水風呂は格別だよ。息苦しいなら、濡らしたタオルを頭にかけると少し楽になるよ」 黒岩に勧められるまま濡れたタオルで頭を覆うと、息苦しさは減った。 2度目は指先までじんわり温まった。 水風呂も気持ちよく感じた。 3度目の外気浴を終えた後、 「整った?」 と黒岩に聞かれ、 「わからない」 と苦笑した。 「でもスッキリしたかな」 隣の椅子にいた黒岩が、俺に覆いかぶさり、耳元で熱く囁いた。 「俺は、興奮した」 「え…」 それって、え!? 俺は何も言えなかった。

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