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第4話 青春だ
「初めまして、僕はケントと言います。男子校の高校三年です」
「俺は、レオ。今はサービス系の仕事を何個か掛け持ちしてる」
まだ、2分。あと28分。
「僕もハンバーガー買ってきてもいいですか」
俺は笑顔で頷いた。
あぁ、どうぞどうぞ。20分かけて買ってきてもいいよって、今はガラガラだ。あの僕はどういった意図でもってここにいるんだ?俺になんかしてほしいのか?
「お待たせしました」
礼儀正しい僕ではある。あと22分。
「あの、教えてほしいんです」
?…本当にしてほしいのか?
「何を教えてほしいの?」
なんかやらしい顔してないかな俺。18歳だから罪にはならないよな。ちょっとだけ期待。
「あの、部活でペアを組んでいる奴が好きなんです。で、点が入ったり、勝ったりしたらハグするじゃないですか、それされちゃうと、なんかもう苦しくって…ずっと抱きしめてたいって思っても、向こうはそんな気は全くないし、俺がミスしても、ドンマイって笑顔で頭をクシャッとされるし」
青春だな。まぁ真剣なのはわかるけどさ、期待した俺はいけない大人なのか?
「で、俺と話してさ、何を聞きたいの?」
「夏のインターハイが終わると、僕らは引退するんです。そしたら、もうハグもできなくなってしまいますよね。部活が終わったら何もなくなってしまう。それだったら告白をしようかなんて思ったりするんですが。お兄さんは高校生の時とか、どうでした?そんな恋したりしませんでしたか?」
要はお悩み相談じゃないか。マジか…。でも純粋に悩んでるんだよな、この僕は。
「俺も男子校でさ、高校一年の時から先輩と付き合ってた」
「告白されたんですか?」
「いや、告白じゃなくて、無理やりにされた」
「!………」
僕ちゃん、その驚いた顔、可愛いな。
「えっ…と。無理やりって」
「だから無理やりだよ」
なんか、揶揄うの、楽しくなってきたぞ。
「俺さ、剣道部だったんだよ。先輩が稽古つけてやるっていうから、二人でずっとやっててさ、ようやく終わって面を取ったら、いきなりキスをされたよ。それも舌を入れてくるやつ。練習でヘトヘトになってたから抵抗もできなかったんだ。で胴紐を解かれて胴を外されて道着の中に手を入れられて、色んなとこ触られた」
「あの、いやじゃなかったんですか?…その無理に」
俺はちょっと勿体ぶって、コーラなんか飲んだりして、僕の顔を見る。
「うぅん…まぁ、俺もその先輩のことをカッコいいと思ってたし、憧れの先輩だったしさ…疲れ過ぎて身体が動かなかったのと、びっくりしたのと、両方だったけど、でも今思うとさ、いやじゃなかったんだと思う」
「…そうですか」
おいおい。大丈夫か? 神妙な顔して。
なんか懐かしい話しをしてしまったな。どうしてるかな…俺のファーストキスを奪ったあの先輩。それからしばらく付き合ったけど先輩が卒業したら、自然と別れてしまったな。
「ケント君も告白してみたら?悩んでるんだったらさ。何もしなかったら、何もないけど。何かしたらさ、何かあるかもしれない」
なぞなぞだな。
「…でも、告白って」
「好きだって言って、キスしたらいいじゃん」
「でも、いきなりキスは」
「いきなりがいいんだよ…告白されて驚いて動揺してる時に無理にでもキスするんだよ…ちゃんとうっとりさせるやつをさ」
「そんな、うっとりって…」
そう、うっとりさせなければいけない。ここが肝だ。俺も初めての時、抵抗しようという気持ちはあった。でも身体は疲れて動けなかったけど、なんかうっとりしてしまって受け入れちゃったんだよな。
「キスのやり方、教えてあげようか」
「あっ…ああ」
そうか、僕はまだキスをしたことがないんだな。
あらま。気付いたらもう30分過ぎてるよ。
まぁ、せっかくだから、あと、少しだけ手ほどきしましょうか。僕ちゃん。
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