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第6話 次の出逢いは

 ケント君とのデートから一週間が経った今日、新しいリクエストをすることにした。 夜のコンビニで雨宿りをしているところに傘に入らないかと声をかけてくれる。いつ雨が降るかもわからないけど、なんか不確定な約束もいいかなと思ったんだ。合言葉は『よかったら、入らない?』だ。  高校生や大先輩はご遠慮いただけるだろう。しっとりした夜のデートができたらいいな。  フードコートデートは消去しようとしても、何度も消去しますかって問われる。はい、と答える操作を3回して、ようやく消去できた。早速、新しい相合い傘デートをリクエストした。また誰かお気に入りしてくれるかな。明日の昼過ぎまで待つことにした。雨が降るのもまだ先そうだしな。  昼過ぎ、仕事中ではあったがようやく休憩を取ることができた。さぁ、どうかな。サイトを開いてみる。 …19人だ。凄っ。ロマンチックがお好きな人達でありますように。  仕事終わりにスマホで天気予報を見る。雲と傘マークがある日は3日後。では、3日後、午後9時に指定したコンビニ周辺で雨が降っていたらということで、俺の服装とか雨宿りしているコンビニのどのあたりで立っているとかの詳細をサイトに送った。  いつもより天気予報を気にしていた。人生で一番雨が降ることを望んだかもしれない。その日天気予報通り昼過ぎから雨が降ってきた。明日の未明まで降るらしい。さぁ、2回目のシチュエーションデートだ。白Tと黒のパンツとシルバーのブレスとシルバーグレーのボディバッグ。メンズのボディバッグは黒とか茶色ばっかで、シルバーを見つけた時はやった、と思ったらレディースだったけど、まぁ、俺は細身だから、買ってしまった。シチュエーション的には俺は傘を持っていないんだ。ボディバッグに100均のレインコートを入れた。  ゲリラ的な大雨じゃなくてよかった。俺は約束のコンビニまで走って雨宿りをしにいくことができた。遠くに見える電光掲示の時計はあと2分で9時になる。 「よかったら、入らない?」  9時ピッタリに声をかけられた。前回もそうだけど、みんな時間をちゃんと守るんだ。優秀だ。 「…ありがとう」  俺はそう言って今晩の相手を見た。 俺より少し背は高めで、同じ細身タイプ。黒のウェリントン型のメガネ。黒のTシャツにジーンズ。俺と同じボディバッグ、色は黒。俺と同じくらいの年齢だろうか、どこにでもいそうな感じ。眉毛の形は俺好み。ちゃんと手入れしてそうだ。  俺は彼の透明のビニール傘に入った。 「少し歩こうか。せっかくの相合い傘だしね」  ふぅん…こんなセリフ言うような奴には見えないけど、さて、どこに行くんだろう。  少し歩くと、彼は俺の腰に手を回してきた。じゃあ俺も。彼の脇腹に手を回した。傍から見ると間違いなくゲイカップルだ。どこに行くのか聞くのもなんか野暮だし、雨のお散歩だと思って、俺は更に彼に寄り添って歩いた。サラッと手は回すのに、最初の言葉意外何も話さない彼。シャイなのか…いやそうでもなさそうだし。すると、急に立ち止まって遠くを指差した。 「ねぇ、あのビルの向こう側の看板見える?」 「えっ?どれ?」  俯き加減の俺は顔を上げて彼の指差す方向を見た。突然、彼は俺に自分の顔を近づけてキスをしようと…たぶんキスだ…したが、唇が触れるか触れないかの距離で止めた。 「ごめん…急にしたら驚くよね」 「ううん…大丈夫だよ」  俺は驚きもしていないし、拒否もしていない。何故止める。俺は大丈夫と言っているのに、何故キスしない? コイツなんか変だ。そう思い出したら全部変に思えてくる。俺がただキスをしたかっただけなのか…。俺から仕掛けてみようか。  また、雨の中歩き出した。さっきまで腰に手を回していたのに、その手は傘の柄を持って心なしか俺と距離を開けようとしている。俺はシャッターが閉められている店の軒先に彼の腕を掴んで引っ張り込んだ。彼は驚いた顔をしたが、お構いなく首根っ子を押さえてキスをした。彼は慌てて唇を離そうとする。生憎だな、俺は腕の力は強いんだよ。傘が手から離れて転がっていった。彼の手を掴んで俺は自分の股間に当てがった。夏場の俺はノーパンだ。薄い生地のパンツはダブついているから見た目は俺のムスコの形はわからないが、触るとはっきりとその感触や形がわかる。 「なぁ、逃げるなよ…俺の硬くしてくれよ。お前も好きなんだろ」  彼は俺から逃れようと必死だ。でも、声は出さない。辺りを見回している。誰か助けを探そうとしているのか。俺は力を緩めると、一目散に逃げて行った。その後ろ姿を見ていると、少しだけ離れた場所から出てきた奴がいた。そいつは、おい、待てよ、と言いながら彼の後を追いかけた。俺は直ぐさま、逃げる奴らを動画で撮った。後から出てきた奴の手元には黒い塊があった。おそらくカメラだ。

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